理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: RP387
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教育
メタ認知が学力に与える影響
*杉原 敏道有馬 慶美郷 貴大三島 誠一小川 恵一武田 貴好
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キーワード: メタ認知能力, 学力, 教育
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抄録
<目的> 理学療法士の最大の目的である対象者の問題を解決するためには自己研鑽が必要となる。しかし、この自己研鑽を可能とするためには自己学習力や自己に対する問題解決能力が兼ね備わっていなければならない。これらを保障する因子としてメタ認知がある。メタ認知とは自己の認知をモニターする認知のことである。本研究では、適切な理学療法学習指導法を模索する一環として、メタ認知能力と学力の関係について検討する。<対象> 学内科目についてすべて履修済みの本校理学療法学科4学年51名を対象とした。<方法> 理学療法の国家試験に類似した多真偽形式の筆記試験100問を実施した。各設問について自信を持って解答したか否かを問い、自信を持って解答出来た場合には○を、自信を持って解答出来なかった場合は×を、それぞれ記入するよう指示した。自信を持って解答し正答した数を学力、試験の結果と自信を持って解答したか否かの一致をメタ認知能力とそれぞれ定義した。具体的には、自信を持って解答し設問に関する解答が正解した場合と、自信を持って解答出来ず設問に関する解答が誤答した場合の累積をメタ認知能力とした。これらの手続きにより求めた学力とメタ認知能力との関係を調べた。両項の関係はPeason’s correlation coefficientを用いて有意水準1%未満で検定した。<結果> 学力試験の平均は72.4±13.3点であった。メタ認知能力の平均は79.7±9.6であった。統計学的検定の結果、学力とメタ認知能力の間に有意な相関関係が認められた(r=0.95,p<0.01)。<考察> 本研究ではメタ認知と学力の間に有意な相関関係が認められた。このことは、メタ認知と学力の密接な関係を表すとともに、学力を支える上でのメタ認知の重要性を示唆するものと推測される。したがって、学業不振に陥っている学生には単に知識を詰め込むような教育を行うのではなく、このような視点に立った指導も必要になってくると考えられる。メタ認知はメタ認知的知識とメタ認知活動に大別される。前者はメタ認知を支える一般的認知特性や自己認知特性に関する知識で、後者は自己に対するモニタリングやコントロールを含む活動を含む。これらの能力は社会や他者との関わりの中で獲得されるとされ、自力での獲得はきわめて難しいと考えられている。したがって、これらの能力の育成には他者による介入は必須であると考察される。そのため、学内や臨床における様々な学習場面で言語的あるいは非言語的フィードバックを与え、それらを媒体に自己に対する適切なメタ認知能力を育成することが重要であると考察される。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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