理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 40
会議情報

理学療法基礎系
重力負荷としての「車いす座位」「自動立位」における循環応答
*江西 一成坂野 裕洋梶原 史恵
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに】理学療法において抗重力肢位は必須であり、その際の循環動態を知ることは重要である。しかし、臨床現場では慎重に段階的他動立位のような変換を行う一方で、生活場面では車いす座位や移乗時立位などが無造作に行われる現状もあり、一定の見解は示されていない。そこで、重力負荷として「車いす坐位」「自動立位」が、他動傾斜立位(Head-Up Tilt; HUT)のどの程度に相当するかを確認したので報告する。
【方法】健常男性6名(22±4歳、身長172±2.3cm、体重64.5±3.8kg)を被験者とした。重力負荷は、車いす坐位・自動立位の他に15・30・45・60度HUTとし、それぞれ20分以上の安静臥床後ランダムに肢位変換し5分間保持した。循環指標としてインピーダンス法による一回拍出量(日本光電AI-601G)、心拍数、血圧を安静時、肢位変換後1・3・5分時に測定し、心拍出量・平均血圧は計算で求めた。これら測定値の安静時からの変化、各肢位間の変化量を比較した。なお本研究は各被験者への十分な説明と同意の下に行った。
【結果】安静時の一回拍出量、 心拍数、心拍出量、平均血圧は、それぞれ109.4±8.7ml、55.8±1.2bpm、6.0±0.5l/min、76.3±3.3mmHgであり、各肢位への変換と同時に一回拍出量減少、心拍数上昇、心拍出量減少、平均血圧上昇の有意な変化を示した。また車いす座位1・5分時の一回拍出量減少-25.1±6.4、-29.2±3.6ml、心拍数上昇10.0±5.0、11.0±4.5bpm、心拍出量減少-0.74±0.25、-0.87±0.30l/min、平均血圧上昇9.3±2.9、10.9±3.7mmHgに対して、一回拍出量・心拍出量の変化は30度HUTにほぼ相当していた。さらに、自動立位1・5分時の一回拍出量減少-47.3±9.2、-53.8±7.3ml、心拍数上昇21.3±5.5、25.3±5.4bpm、心拍出量減少-1.46±0.38、-1.74±0.38l/min、平均血圧上昇10.5±1.7、13.0±3.5mmHgは最も大きな変化量だった。
【考察・まとめ】生体は骨格を筋・皮膚が囲む柔軟な構造であり、重力負荷によって血液は下肢方向へ移動する。その結果、静脈還流量・心拍出量の減少を生じ低血圧が惹起される。これらの刺激は圧受容器に感知され、そこから迷走神経抑制・心臓交感神経促進を介した心拍数上昇による心拍出量回復、さらに交感神経を介した血管収縮による総末梢血管抵抗上昇によって血圧を維持することが知られている。今回の結果から、重力負荷として車いす座位は30度HUTに相当し、自動立位は最大負荷であることが分かった。また同時に、心拍応答・心拍出量回復機能は他動立位よりも活発に作動しており、血圧維持という点では有用である可能性も示唆された。
著者関連情報
© 2005 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top