理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 74
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理学療法基礎系
跛行と股関節外転モーメントについて
*前田 貴司広田 桂介志波 直人中島 義博西村 繁典梅津 祐一永田 見生田川 善彦
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抄録

【はじめに】変形性股関節症の主な跛行には患側立脚期に反対側の骨盤が下方へ落ちるTrendelenburg歩行と患側立脚期に同側の骨盤が下方へ落ちるDuchenne歩行があり、これらは外転筋力の低下が原因とされている。そこで三次元動作解析装置を用いて歩行解析を行い、各跛行の立脚期での股関節外転モーメントを計測し比較検討したので報告する。
【方法】対象は変形性股関節症と診断され骨切り術を施行した8名(男性1名、女性7名、22歳から50歳、平均40歳)。
 方法は三次元動作解析装置と床反力計を用い自由歩行時の歩行解析を行った。得られた結果より立脚期の前額面での骨盤の動きと股関節内外転角度よりTrendelenburg歩行を呈する3名とDuchenne歩行を呈する5名とに分類し、立脚期の股関節外転モーメントを求め、体重で補正を行い術側と非術側でその値を比較した。
【結果】立脚期の外転モーメントの体重比は、Trendelenburg歩行の非術側で平均0.84Nm/Kg、術側0.87Nm/Kg。Duchenne歩行の非術側で平均0.81Nm/Kg、術側0.4Nm/Kgである。Trendelenburg歩行は術側の値が非術側の値より大きく、Duchenne歩行は非術側の値が術側の値より大きくなった。
【考察とまとめ】立脚期の外転モーメント体重比において、Trendelenburg歩行は術側の値が大きく、Duchenne歩行は非術側の値が大きくなった点について、立脚期の股関節角度から検討すると、Trendelenburg歩行は術側立脚期に反対側骨盤が下方へ落ちるため術側は内転位になり、Duchenne歩行は術側立脚期に同側骨盤が下方へ落ちるため術側は外転位になる。これらより、Trendelenburg歩行の床反力ベクトルが股関節中心よりも内側へ移動し、レバーアームが大きくなるため外転モーメントは大きくなり、Duchenne歩行は床反力ベクトルが股関節中心に近づくためレバーアームが小さくなるため外転モーメントは小さくなると考えられる。このように、Trendelenburg歩行においては、立脚期の外転モーメントは非術側より大きな値を示し、跛行の原因が一概に外転筋力低下とは言い難い。また、変形性股関節症の跛行に関する報告によると、Trendelenburg歩行やDuchenne歩行は、筋力低下だけが原因ではなく、疼痛や関節可動域制限、脚長差なども原因に考えられると言われ、今後更なる検討が必要と思われる。

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© 2005 日本理学療法士協会
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