抄録
【はじめに】我々は第38回本学会にて、入院中の脳卒中者における全身持久性低下に対し、通常の理学療法と併せ客観的指標を用いた全身持久性向上プログラムが必要であると報告した。今回、運動負荷試験で得た運動強度での一定時間の歩行プログラムは全身持久性を改善するという仮説をたて、比較試験による検討を行った。
【対象】2003年6月から翌年4月までに当センターに入院した脳卒中者のうち、社会生活自立を目的として監視歩行を開始し、運動負荷試験が2回以上可能であった7例を対象とした。診断名は脳梗塞1例、脳出血6、障害名は右片麻痺6例、左片麻痺1、平均年齢57.0±9.3歳。発症から全身持久性初回評価までは、平均106.7±64.2病日であった。初回評価時の下肢Br.stageは4が4例、5が3、AFOとT字杖の使用は6例であった。全例から文書にて説明と同意を得た。
【全身持久性向上プログラムの流れ】40分間の個別診療に加え、1回/日、40分、5回/週で計4週間施行した。プログラム開始前(開始前)に全身持久性評価を行った後、症例の快適な速度の歩行(自由歩行)を運動強度として、個別診療に準じた歩行量で2週間施行した(自由歩行プログラム)。終了時に再評価し、次の2週間はAT相当のV(dot)O2
となる歩行速度を運動強度として、10分間の連続歩行を2-3sets/回施行した(設定歩行プログラム)。終了時に3回目の評価を行った。
【運動負荷試験】6分間歩行テストを用い、自由歩行と症例が速いと感じる歩行(速歩)の2段階負荷試験とした。指標は6分間最大歩行距離(6MD)、心拍数100拍/分に対応するV(dot)O2
(V(dot)O2
100)、各歩行速度の平均V(dot)O2
(アニマ社製携帯型酸素消費量計AT1100使用)とした。ATは自転車エルゴメーターによるRump負荷で、V-slope法にて自動算出した。
【結果】自由歩行プログラムを施行した7例の平均6MDは、開始前196.4±111.9m、プログラム後237.5±87.0mで有意な増加はなかった。V(dot)O2
100は、開始前に比べプログラム後は低下又は変化なしが5例であった。設定歩行プログラムを実施できたのは4例で、平均6MDは363.1±54.3mと開始前に比べ有意に増加し(P<0.05) 、V(dot)O2
100も3例で増加した。設定歩行プログラムでATに相当したのは速歩で、平均V(dot)O2
は9.8±2.2ml/kg/minとAT(10.8±1.56)の91%であった。
【考察】自由歩行プログラムは、6MDは増加したことから歩行の運動効率向上に有効だが、V(dot)O2
100では低下例が多く、循環応答改善の運動強度としては不十分と考えられた。設定歩行プログラムの結果から、脳卒中者では速歩によるAT相当の歩行を10分以上連続して行うことが全身持久性向上に有効と考えられた。