抄録
【目的】腰痛症の原因の1つに筋疲労がある。近年、筋持久力と腰痛症との関連についての報告は多数あるが、疲労が起こると腰部にどのような変化が生じているかは明らかにされていない。本研究の目的は、腰背部筋疲労時に腰椎のアライメント変化が発生するかを確認することである。
【方法】対象は健常な成人男性9名で、年齢22.0±1.0歳、身長171.8±3.8cm、体重69.6±11.9kgであった。脊椎のアライメント測定にはスパイナルマウス(Index社製)を用いた。安静立位、体幹30°屈曲位、40°屈曲位の3つの肢位で、Th1~S1までのアライメントを矢状面で5回測定した。体幹屈曲角度の設定にはスパイナルマウスの傾斜計を利用した。使用マニュアルを参考に、Th12~L4について椎体間の矢状面における角度の総和を上位腰椎角度、L4~S1の総和を下位腰椎角度として、アライメントの違いを比較した。腰背部筋に疲労を発生させる運動として、Konradら(2001)を参考に腹臥位でベッドから上半身を出し、体幹屈曲45°から0°までの伸展運動を2秒に1回のペースでall outまで行わせ、これを1セット目とした。その直後に3つの肢位で再びアライメント測定を行った。10分間の安静の後、2セット目、3セット目の運動を行わせ、それぞれアライメント測定を続けた。アライメントの角度表記は、数字が大きくなるほど伸展の減少を意味し、同時にsegmentの後方開大の増加、腰椎前彎の減少を表すものとした。
【結果】安静立位での上位腰椎角度は運動前とそれぞれの運動後において有意差を認めなかったが、下位腰椎角度は、運動前-12.0±4.1°、1セット目-9.7±2.6°、2セット目-9.2±3.6°、3セット目-8.2±3.2°となり、運動前より運動後で有意に伸展の減少を認めた(p<0.05)。30°屈曲位での上位腰椎角度は運動前とそれぞれの運動後において有意差を認めなかったが、下位腰椎角度は運動前-6.2±1.9°、1セット目-4.2±2.0°、2セット目-3.2±2.0°、3セット目-2.5±1.7°となり、運動前より運動後で有意に伸展の減少を認めた(p<0.001)。また40°屈曲位でも、安静立位、30°屈曲位と同様の結果を得た。
【考察】今回の研究で、筋疲労が起こると安静立位、体幹屈曲位で下位腰椎の伸展角度が減少することが示された。スパイナルマウスによる測定で、筋疲労により腰椎のアライメントが変化することを確認できた意味は大きい。この変化が発生した理由の1つとして、下位腰椎は脊椎のなかで最も伸展可動域が大きいことがあげられ、これが何らかの影響を持つと考えられる。今後は筋持久力とアライメント変化との関係についても、さらに検討を続けたい。