抄録
【はじめに】2004年の第39回日本理学療法学術大会において腹臥位療法(Prone Position Therapy:PPT)が静止時立位バランスに与える影響を、重心動揺計を用いて総軌跡長と矩形面積を調査し報告した。結果、PPTを施行することで、総軌跡長、矩形面積ともに治療前後で有意差を認めた。本研究では、PPTの施行有無で、前後動揺平均中心変位(DEV OF MY:DOMY)と左右動揺平均中心変位(DEV OF MX:DOMX)について調査を行ったので報告する。
【対象・方法】対象は、研究目的に同意を得た症例24名を、PPT群(中枢疾患6名:平均年齢75歳)と対照群(中枢疾患6名:平均年齢68歳)、PPT群(整形疾患6名:平均年齢78歳)と対照群(整形疾患6名:平均年齢85歳)とに設定した。なお、両群の条件は立位20秒間保持可能とした。測定機器はアニマ社製の重心動揺計GS-11を用い、測定時間は20msecとし、測定肢位は開眼にて肩幅程度の開脚立位とした。PPTはベッド及びプラットホーム上で両側肩関節外転・外旋、肘関節屈曲、前腕回内位とし、手掌面をベッド等に接触させた。PPT群は週6日、1ヶ月間行い、1回約15分間施行した。計測回数は各症例週2回の合計9回とした。検討項目は、1)PPT施行有無のDOMY・DOMX、2)疾患別の重心動揺変化とし、統計学的処理は変化量を求めるためにPPT施行前後での差の平均値を算出し、対応あるt検定(有意水準5%未満)を用いた。
【結果】DOMXでは整形疾患PPT群(0.4±0.3cm)と対照群(-0.1±0.1cm)間・中枢疾患PPT群(0.4±0.2cm)と対照群(-0.5±0.2cm)間でそれぞれ有意差を認めた。しかしDOMYでは整形疾患PPT群(0.6±1.0cm)と対照群(-0.2±0.6cm)間・中枢疾患PPT群(0.6±0.5cm)と対照群(-0.2±0.7cm)間でともに有意差は認めなかった。疾患別では特に顕著な効果は認めなかった。
【考察】腹臥位療法はパーキンソン病患者に見られる後方突進現象を是正・矯正する目的で考案されたこともあって、前後動揺に影響を及ぼすという仮説のもと研究を進めた。しかし、結果ではDOMYよりもDOMXで有意差を認めた。これは腹臥位姿勢によりベッドからの特異的刺激が入力され左右両側同圧を得ることで、姿勢筋緊張や全身のアライメントに変化を及ぼし左右偏倚減少に繋がったと考える。DOMYでは腹臥位になることで股関節屈筋群・体幹筋に感覚入力され屈筋優位となり、高齢者特有の後方重心姿勢を変化するまでには至らず、前後動揺変化として現われることは無かったと思われる。今後、継続してデータを蓄積していくことで腹臥位療法の般化に努めたい。