理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P1-098
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理学療法基礎系
体位交換に用いる枕の使用が換気に与える影響
―自律神経機能に着目した調査―
内田 学加藤 宗規丸山 仁司
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キーワード: 自律神経機能, , 呼吸機能
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抄録
【目的】日常的に見受けられる胸郭後面に枕を固定した姿勢保持を目にする機会は多いが、殆どが習慣的に枕の固定部位を胸郭の後面にしている.我々はこの姿勢保持の呼吸器系に対する影響について第41回~43回日本理学療法学術大会にて報告してきた.今回は、胸郭後面に枕を固定した姿勢が自律神経系に与える影響についての検討を行う事を目的とした.

【対象】対象は健常な男性18名、平均年齢23.1±2.5歳、平均身長173.4±3.2cmであり過去に循環器系、呼吸器系の既往がなく脊柱、胸郭に変形の認められない者とした.なお対象には事前に研究の主旨を説明し同意を得た後に測定を行った.

【方法】方法は背臥位、胸郭後面に枕を固定した半側臥位(以下、枕固定1)、肩甲帯と骨盤帯に枕を固定した半側臥位(以下、枕固定2)の3つの姿勢において、呼吸機能検査の中からTV、VC、RR、胸郭拡張差(腋窩、第10肋骨)を測定した.また、自律神経系の影響を測定するためにR- R間隔のゆらぎに対する周波数解析を行い、そのパワースペクトルを算出しそれぞれの姿勢におけるHF、LF/HFを算出し相違について検討を行った.統計的手法はそれぞれの姿勢間の値について分散分析を行い得られた主効果について多重比較(Tukey)を行った.危険率は5%とし、統計ソフトはDr SPSSII for windowsを用いて検討した.

【結果】TVは背臥位、枕固定1、枕固定2の順に0.44±0.13ℓ、0.3±0.15ℓ、0.39±0.21ℓであり枕固定1と他の姿勢の間に有意差を認めた.RRは背臥位、枕固定1、枕固定2の順に17±2.1回/min、21±1.7回/min、19±2.4回/minであり枕固定と他の姿勢の間に有意差を認めた.VCに関しては有意差を認めなかった.胸郭拡張差は腋窩部の背臥位、枕固定1、枕固定2の順に1.3±1.4cm、2.6±1.1cm、1.8±2.1cm、第10肋骨部は2.7±1.2cm、1.2±0.6cm、2.3±1.3cmであり、枕固定1のみ呼吸形態が胸式優位となり、それぞれ枕固定1との間に有意差を認めた.HFについては背臥位、枕固定1、枕固定2の順に53.73nu、49.64nu、52.2nuであった.LF/HFについては0.61nu、0.92nu、0.72nuであり、LF、LF/HF共に枕固定1と他の姿勢間に有意差を認めた.

【考察】枕固定1に関しては他の姿勢と比較してTVが制限されていた.なおかつRRは上昇し制限されているTVを回数で代償する様子が伺えた.換気様式も胸式呼吸になっており効率の悪さも考えられる.枕と床面で胸郭を固定された状態で換気を行うのは重力などの影響が非常に強く、制限因子に打ち勝つべく無理な呼吸がLF/HFを優位にする結果であると推察された.枕固定2に関しては有意差を認めない事から、姿勢保持への有効性が示唆された.
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© 2009 日本理学療法士協会
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