理学療法学Supplement
Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: P3-513
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内部障害系理学療法
大腿前面筋組織厚や体組成評価からみた心大血管疾患患者のレジスタンストレーニングの検証
設楽 達則高橋 哲也熊丸 めぐみ田屋 雅信風間 寛子西川 淳一多賀谷 晴恵猪熊 正美村上 淳安達 仁大島 茂谷口 興一
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抄録
【目的】本邦における心疾患患者に対する運動療法は,嫌気性代謝閾値(AT)レベルでの有酸素運動が中心に行われてきたが,近年,心疾患患者に対するレジスタンストレーニングが注目されている.レジスタンストレーニングの主効果として,筋力・持久力の増加に加えて,筋量の増加による基礎代謝の増加や,糖代謝や血清脂質,自己効力感やQOLの改善などが認められるとされるが,心疾患を対象にしたレジスタンストレーニングが,除脂肪量や骨格筋量をどの程度変化させるかはいまだ報告が十分でない.そこで本研究では,運動療法(有酸素運動とレジスタンストレーニング)による筋力と筋量の変化の関係について検討を行った.

【方法】対象は,当センターの外来心臓リハビリテーションプログラムに運動療法開始から3ヵ月間以上継続して参加した37例(平均年齢65.5(40-78)歳).疾患の内訳は,狭心症18例,心筋梗塞11例,心不全2例,閉塞性動脈硬化症2例,開心術後2例,腹部大動脈瘤術後1例であった.運動療法はATレベルでの有酸素運動から開始し,開心術例は運動療法開始から5週間後(手術後約8週間後),非開心術例は発症5週間後にレジスタンストレーニングを追加した.ウエイトスタック式のレジスタンストレーニングマシーンを用いて,ややきついと感じる(RPE12~13程度)強度でレッグプレス,レッグエクステンション,上肢はチェストプレス,ラットプルダウンを1種目につき10回2~3セット実施した.筋力の測定は膝関節90°屈曲位での等尺性最大膝伸展筋力を求め,さらに,超音波診断装置にて大腿前面筋組織厚を測定した.また,大腿周径と体組成(体重,除脂肪量,体脂肪率,筋肉量),心肺運動負荷試験からATと最高酸素摂取量(peak V(dot)O2)を測定し,これらの測定項目について,運動療法開始直後と3ヵ月後の値を比較,検討した.尚,対象者には事前に本研究について十分説明をし,同意を得たうえで行った.

【結果】発症(手術)から3ヵ月の運動療法により,AT,peak V(dot)O2,体脂肪率は有意に改善したものの,筋力,筋組織厚,大腿周径,筋肉量,体重,除脂肪量に有意な変化を認めなかった.

【考察】発症(手術)から3ヵ月の運動療法で有酸素運動能や全身持久力は改善を認めたものの,筋力,筋組織厚,大腿周径,除脂肪量などに有意な変化を認めなかったのは,レジスタンストレーニング開始からの期間が短いことや当センターでのレジスタンストレーニングの負荷強度が筋力や筋量を増加させるには十分な負荷量ではなかったことが主原因と考えられる.心疾患患者の筋力や筋量を増加させるためのレジスタンストレーニングを確立するために,安全で効果的な負荷量についての検証を進める必要がある.
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© 2009 日本理学療法士協会
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