理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
ステップ動作におけるステップ方向の制御に関する分析
秋吉 直樹石井 慎一郎本田 英義山下 剛司山本 澄子
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p. Ab0450

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抄録
【はじめに、目的】 姿勢制御や運動制御は,転倒予防や運動パフォーマンスの向上といった観点から理学療法の分野で重要な役割を占めいている.近年,先行随伴性姿勢調節(Anticipatory Postural Adjustments;以下APAs)は,姿勢制御の1つとして注目を集めている.APAsの1つである逆応答現象は,歩き始めなどにみられる重心(以下COG)の移動に先行する床反力作用点(以下COP)の逆方向への移動として定義されており,開始肢位における重心位置やステップ方向の影響などを受けると報告されている.しかし,歩き始めやステップ動作におけるステップ方向の違いが,逆応答現象に与える影響とその時の姿勢制御について詳細に分析した報告は少ない.そこで本研究では,異なる方向へのステップ動作における足尖離地までの動作準備期に着目し,逆応答現象と股関節モーメントの関係を明確にすることを目的とした.【方法】 対象は健常成人10名(26.3±8.7歳,162.8±8.2cm,58.1±8.5kg)とした.運動課題は,静止立位姿勢から予め設定した3方向へ出来る限り速くステップする動作とした.ステップの方向は,歩行路に設定した座標系に従い被験者を立たせ,矢状方向正面を0度として,矢状軸から左右へ30度,60度と設定した.なお,ステップ幅は30cmとし,床面にテープを貼りステップ位置をマーキングした.計測は各方向へのステップ動作を無作為に左右2回ずつ計12回実施した.被験者の身体表面10ヶ所(左右肩峰・股関節・膝関節・外果・MP関節)に赤外線反射標点を貼付し,三次元動作解析装置VICON612(VICON PEAK社製)と床反力計(AMTI社製)を使用し標点の三次元座標位置と床反力作用点を計測した.得られた時系列データをCOP移動開始からステップ脚足尖離地まで(動作準備期)で切り出し,前後・左右方向のCOP最大移動量と股関節モーメントを算出し,それぞれ身長,身長×体重で正規化した.分析対象は右下肢でのステップ動作とし,統計処理にはステップ方向を因子とした繰り返しのある一元配置分散分析を用いた.有意水準はp<0.05とした.【倫理的配慮、説明と同意】 ヘルシンキ宣言に基づき,事前に被験者には本研究の主旨と内容を説明し,同意を得た.【結果】 ステップ動作開始前の立位姿勢において,左右床反力鉛直成分に左右差は認められなかった(右下肢4.97±0.28N/kg,左下肢5.01±0.36N/kg).このことから,開始肢位における左右下肢の荷重量はステップ動作に影響していないと考えられた.各ステップ方向における前後方向のCOP最大移動量は,0度方向で3.1±0.8%,30度方向で2.7±1.0%,60度方向で2.0±0.6%後方移動し,有意な差が認められた.ステップ脚側へのCOP最大移動量は,0度方向で3.6±0.8%,30度方向で1.9±0.9%,60度方向で1.1±0.5%であり,有意な差が認められた.ステップ脚・支持脚股関節外転モーメントの最大値は,それぞれ0度で28.8±6.0%と64.5±4.5%,30度で22.5±5.8%と65.5±11.5%,60度で25.0±5.5%と71.9±5.8%であり,有意な差は認められなかった.【考察】 ステップ動作において,ステップ方向の変化に伴い動作準備期における後方・ステップ脚側へのCOP最大移動量に違いが認められた.このことから,ステップ方向の制御はステップ脚足尖離地前の動作準備期に行われており,ステップ動作や歩き始めにおいてCOPがステップ脚側後方へ移動する逆応答現象が,支持脚側へ体重を移動させるためだけではなく,ステップ方向も制御していることが示唆された.ステップ脚・支持脚股関節モーメントには有意な差は認められず,今回の結果からステップ方向の制御と股関節モーメントとの関連性は認められなかった.しかし,股関節モーメントに関しては,ステップ方向の変化に伴いステップ脚股関節外転モーメントを増加させる例や減少させる例,支持脚股関節外転モーメントのタイミングを早くする例など個別性があったことから,今後は股関節機能や左右の脚による違いなどを含めて詳細に検討する必要があると考えられる.また,足関節など他関節による影響に関しても検討する必要がある.【理学療法学研究としての意義】 日常生活における歩行やステップ動作は,一定の方向に行うのではなく様々な方向へ行っている.したがって,ステップ動作の方向に関する制御を明らかにすることは,日常生活動作の改善・転倒予防のために重要であると考える.また,随意運動は先行する姿勢制御を伴わない限り遂行できないと言われており,APAsに着目した分析は,運動療法の展開を考える上で有用である.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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