抄録
【目的】 新生児集中治療室(NICU)に入院した極低出生体重児の発達予後が芳しくないことが明らかになり、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)等がNICUから退院後にかけて発達をフォローする病院が増えている。極低出生体重児において発達予後から後方視的に出生後因子・新生児・乳児期の発達経過の特徴を把握し、NICUから必要なリハビリテーションを明らかにする。【方法】 対象は当院に入院した極低出生体重児で、フォローアップ外来で期間内に4回全ての健診を受診した81名。5歳6ヵ月時での知能検査(WISC)と診断された障害の結果おいて、出生後因子、NICU入院中の新生児神経学的(Dubowitz)評価、修正1歳6ヵ月と3歳時の発達検査(新版K式発達検査;K式検査)で関係性の高い因子・項目について検討した(Dubowitz評価の検討は別対象群42名で実施)。検定は多重比較検定Fisher's PLSD、ピアソン相関係数、多重比較検定Scheffe's F-testを用い、危険率5%以下を統計学的有意とした。Dubowitz評価はPTが実施し、Tone・Tone Patterns・Reflexes・Movements・Abnormal Signs・Behaviorの6領域、総合点(Total)34点満点から成る。K式検査は、PT・OTが実施し、姿勢-運動(P-M)・認知-適応(C-A)・言語-社会(L-S)の3領域と全領域(Total)から成り、発達指数(DQ)では正常85以上・境界70-84・遅滞69以下とした。WISCは言語聴覚士、臨床心理士が実施し、言語性知能指数(VIQ)・動作性知能指数(PIQ)と全検査知能指数(FIQ)から成り、知能指数(IQ)では正常80以上・境界70-79・遅滞69以下とした。障害が疑われた児は小児神経科医師に紹介され診断された。【倫理的配慮】 本調査は当院の倫理規定に基づき実施された。【結果】 5歳6ヵ月時の発達予後は、正常51名(正常群)、境界遅滞13名(MR群)、広汎性発達障害8名(PDD群)、脳性麻痺9名(CP群)であった。5歳6ヵ月時のWISCの結果では、正常群でも5%水準の有意差でVIQ>PIQの児が有意に多かった。MR群は各IQ一律に低値であった。PDD群はPIQに比しVIQは低値傾向であった。CP群はMR群と逆傾向であった。修正1歳6ヵ月時のK式検査の結果では、Totalでは正常群に比し他群は有意に低値であった。MR群では全領域は一律に低値を示した。PDD群ではL-Sは境界域で低値を示した。CP群ではP-Mは遅滞域で低値を示した。すでに障害の特性が明確になっていた。修正6ヵ月時のK式検査の結果では、Totalでは正常群に比し他群は有意に低値であった。MR群では全領域は一律に低値を示した。PDD群ではP-Mは他領域に比し低値を示す傾向であった。CP群ではP-Mが境界域で低値を示した。PDD群はP-Mの低値が特徴で、他群は障害の特徴が伺えた。新生児期のDubowitz評価の結果では、正常群ではMovements・Abnormal Signsが有意に低値であった。MR群ではReflexes以外の領域が有意に低値であった。PDD群ではMovements・Abnormal Signs・Behaviorが有意に低値であった。CP群ではTone・Movementsが有意に低値であった。出生後因子と発達予後の関係では、正常群に比しMR群・PDD群では有意に在胎週数が早い、出生体重・身長・頭囲は小さい、入院期間は長い、呼吸器管理期間が長かった。MR群・PDD群は超低出生体重児が有意に多かった。入院期間・呼吸器管理日数・出生体重・頭囲・身長とPIQ・FIQと有意な相関関係を認めた。Dubowitz評価のTotalとWISCのVIQ・PIQ・FIQと有意な相関関係を認めた。修正6ヵ月時のK式検査の各領域・TotalはWISCのすべての領域・Totalで有意な相関関係を認めた。【考察】 Dubowitz評価とK式検査の各項目と発達予後の関係から認めた新生児・乳児期の特徴は、正常群では未熟性が強い、頚部・体幹の筋緊張・筋力が弱い、両肩が後退しやすい・対称姿勢が苦手、身体の協調的な動きが苦手、視覚反応・認知が弱いであった。MR群の特徴は正常群の特徴に加え、異常な眼の動き、易刺激性、頚部・体幹の筋緊張・筋力がさらに弱い、身体・手先・目と手の協調的な動きがさらに苦手、遊具での遊び乏しい、対人関係が弱い、歩行が遅れる、記憶・予測が苦手、指さし・言葉の遅れであった。PDD群の特徴は正常群とMR群の特徴に加え、視覚反応がさらに弱い、身体の協調性がさらに弱いであった。CP群の特徴は正常群の特徴に加え、四肢の筋緊張が低い、両手把握が苦手、四つ這い・立位保持が遅れるであった。これらの特徴から、正常群であれば、仰臥位・腹臥位での頭部回旋・頭部の正中位保持・対称姿勢優位、手が顔や口元に近づく、座位で頭部保持、注追視 、自発運動(感覚運動経験)の促進が、児のストレスがかからない範囲でNICUから家族指導・ハンドリングで必要と思われた。【理学療法学研究としての意義】 極低出生体重児において発達予後から後方視的に新生児・乳児期の発達経過の特徴を把握することで、中長期視点に基づいてNICUから必要な理学療法を明らになると考えられた。