理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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専門領域 口述
脳性麻痺に対する入院理学療法の効果
─GMFMによる検討─
島 恵大橋 知行鳥瀬 義知荒井 洋
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キーワード: 脳性麻痺, GMFM, 治療効果
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p. Be0025

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抄録
【はじめに、目的】 脳性麻痺に対するリハビリテーション(以下リハ)の効果に関するevidenceは乏しい。その原因として、脳性麻痺は病態および重症度が多様で、生活機能が年齢や生活環境によって影響を受けるため、リハの効果を客観的に証明することが難しいことが挙げられる。我々は、生活環境の影響を受けにくい入院リハによって得られた機能レベルの変化を、Gross Motor Function Measure (GMFM)、 Wee-FIMを用いて報告してきた。今回、その効果を科学的に証明するため、病態を脳室周囲白質軟化症による痙直型両麻痺児に限定し、機能変化が大きい幼児期から学童期を対象として、国際的に信頼性、妥当性が証明されているGMFMを用いたA-B-Aデザインにより前方視的に検討した。【方法】 対象は、2010年1月~2011年5月の間に当院に機能向上を目的として単独入院した4歳~8歳(平均5.6歳)の脳室周囲白質軟化症による痙直型両麻痺のうち、GMFCSがlevel 3~4で、入院6ヶ月前から研究期間全体を通じてボツリヌス毒素療法、入院1年前から研究期間全体を通じて手術療法を受ける予定がない11人(男3人、女8人)を対象とした。運動機能に影響を与える重篤な合併症は全員に認めなかった。新版K式発達検査による発達指数は認知・適応領域35~101、言語・社会領域62~113であった。入院期間を4ヶ月に設定し、神経発達学的治療を基盤とした理学療法士、作業療法士、医師、看護師、臨床心理士による包括的なリハを施行した。平日は理学療法(以下PT)、作業療法(以下OT)を各1時間、土曜はいずれかを1時間行い、必要に応じて補装具の調整も行った。定期的に多職種間のカンファレンスを行い、リハの進行状況ならびに今後の方針について調整を図った。入院前後の各2ヶ月間は当院外来および地域の療育サービスにて週1回~3回のPTまたはOTが行われていた。入院2ヶ月前、入院時、入院2ヶ月後、退院時、退院2ヶ月後に研究内容を知らない理学療法士によってGMFMを評価した。各領域の粗点、総合点およびGMFM-66に変換した点数の変化をrepeated measures ANOVAを用いて検討し、Bonferroniの方法で多重比較して有意差を検定した。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は当院の倫理委員会の承認を経て、対象の子どもおよび保護者に口頭および文書を用いて説明し、同意を得た上で行った。【結果】 入院2ヶ月前-退院2ヶ月後の8ヶ月間でC、 D、 E領域の粗点、総合点およびGMFM-66の点数は有意に上昇した(p<0.01)。しかし2ヶ月ごとの比較で、各領域の粗点および総合点が有意な上昇を示した期間はなかった。GMFM-66の点数は、入院2ヶ月前46.7±7.5、入院時46.5±8.0、入院2ヶ月後49.3±8.4、退院時48.5±8.5、退院2ヶ月後49.0±7.9であり、2ヶ月ごとの比較で点数が有意に上昇したのは入院時から入院2ヶ月までの期間のみであった(p<0.05)。【考察】 年齢による変化を考慮されたパラメーターであるGMFM-66が入院前・退院後の2ヶ月間は変化せず、入院中の前期2ヶ月間で有意に上昇したことは、入院リハが粗大運動機能を高め、退院後もそれが維持されたことを示している。領域ごとの粗点で有意差が出なかったことは、単に立位・歩行など限定された機能が向上したのではなく、全体的な姿勢保持機能、床上の姿勢変換能力など総合的な運動能力が向上したことを表していると考えられる。【理学療法学研究としての意義】 一般には包括的なリハは脳性麻痺児・者の機能向上に不可欠と考えられているが、「根拠に基づく医療(以下EBM)」が求められる現代においては、基盤となる根拠が脆弱なためにその意義が評価され難い。本研究では、脳性麻痺の中で最も多い病態である脳室周囲白質軟化症痙直型両麻痺において入院治療の効果をevidence level 3で証明した。リハの中で粗大運動に直接影響を与えるPTの意義が確認されたことは、EBMの基礎として大きな意味を持つと思われる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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