理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

一般演題 ポスター
人工膝関節全置換術における術前と術中膝関節屈曲可動域が術後可動域に与える影響
山下 愛子生駒 成亨白木 信義
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. Cb0716

詳細
抄録
【はじめに、目的】 当院では155度までの深屈曲を許容するよう設計されているNexGen LPS-Flex(以下LPS)を使用しているが,臨床上,術中麻酔下に得た関節可動域(以下術中ROM)に達する症例は少なく,術前ROM不良例は術中も深屈曲が得られていない印象を受ける.そこで今回,TKA後のROMを分析し,術前ROMと術中ROMが術後ROMに与える影響について比較検討したのでここに報告する.【方法】 2009年7月から2010年8月の13カ月間,当院でTKA施行された全症例172例・211膝の内,LPS以外の機種を使用した症例31例33膝と,創状態等が原因でリハビリに制限が生じた症例14例15膝を除外し,術後4週間経過観察可能であった62例71膝を対象とした.原疾患は変形性膝関節症56例・64膝,関節リウマチ6例7膝,性別は男性14例・15膝,女性48例・56膝で,手術時平均年齢73.5±7.6歳であった.術前評価時,術中麻酔下時,術後1,2,3,4週の他動膝関節屈曲角度を測定し,術中より術後4週での他動膝関節屈曲角度を引いたものを算出した.術前ROMと術中ROM,術中ROMと術後1,2,3,4週でのROMの相関は,統計処理としてスピアマンの順位相関係数を用いた.術前ROM別に100°未満(7膝),100°以上120°未満(22膝),120°以上(42膝)に分類し,3群での術中ROMと術後4週でのROMを比較検討し,統計処理はクラスカルワーリス検定,多重比較を用いた.また,術中ROM別に130°未満(10膝),130°以上(61膝)に分類し,2群間における術後1,2,3,4週でのROMの比較検討と,術中ROMと術後4週ROMとの差を比較検討し,統計処理としてマンホイットニ検定を用いた.危険率は全て5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 全対象において調査対象になることの了承を得た.【結果】 術前ROMと術中ROMはやや相関を認め,術中ROMと術後1,2週でのROMは相関を認めないが,術後3,4週でのROMはやや相関を認めた.術前ROM別3群間における術中ROMと術後4週ROMの比較では,術前100度未満の群と術前100度以上120度未満の群,術前120度以上の群に有意差が認められた.術中ROM別2群間における術後各週でのROMの比較では,術後1,2週は有意差を認めないが,術後3,4週では有意差を認めた.また,術中ROM130度以上の群のほうが,130度未満の群より術後4週における術中ROMとの差が大きいことが分かった.【考察】 TKA後ROMを左右する因子として,術前屈曲角度や機種,疼痛が報告されている。今回,対象を全例同一機種とすることにより影響する因子を少なくし,その条件下で術前ROMと術中ROMが術後ROMに与える影響について研究した.本研究において術中ROMは術前ROMに依存し,術前ROM100度未満の群は,術中ROMと術後4週ROMが減少する傾向を示した.これはTKAでは膝関節伸展機構の伸張性低下には関与できないことが原因だと思われる.術中ROMにおいては,術後1~2週間は炎症症状に起因する疼痛と腫脹が大きな屈曲阻害因子となっている為,術後ROMに差はないが,術後3~4週では炎症症状沈静化に伴い術後ROMに差がでてくることが分かった.術後約3~4週程度で癒着が始まるとの見解もあり,術後4週で術中ROMに達することは難しく,術中ROM130度以上の群のほうが,術後4週における術中ROMとの差が大きいことが分かった.術後3週よりROMに差が生じてくることから,術後早期に炎症症状や疼痛を軽減することが必要だと考える.【理学療法学研究としての意義】 術前ROMを可能な限り改善させておくことが術後ROM獲得につながり,術前ROM100度未満の場合,術前ROM100度以上保たれているものより術中ROMと術後4週ROMが小さくなることが予測できる.また,術後3,4週ROMは術中ROMに依存するため,術中ROMを参考に可動域拡大を図れるが,術中ROM130度以上獲得できたもののほうが術後4週における術中ROMとの差は大きく,術前関節内外の状態や術後炎症,治癒過程における制限因子を考えながらアプローチを行う必要があると考える.入院期間短縮に伴うより有効な術後リハビリテーションを提供するために予後予測は重要となっており,本研究において,術前ROMや術中ROMを参考に,術後ROMや術後日常生活動作の予後予測がある程度可能となると思われる.
著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top