理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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高齢者骨折後の転倒群、非転倒群の運動機能評価と骨密度の比較
園村 和輝周宝 光春井上 裕久大塚 豊甲斐 功一井上 誠一
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キーワード: 高齢者骨折, 転倒, 骨密度
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p. Cb0754

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抄録
【はじめに、目的 】 骨粗鬆症を基盤とする高齢者骨折、主たる4種類の骨折(大腿骨近位部骨折、脊椎骨圧迫骨折、上腕骨近位部骨折、橈骨遠位端骨折)の増加は高齢化率が今後さらに増加する我が国において無視できない問題である。現在、65歳以上の高齢者は約3000万人で、その1/5~1/4が毎年転倒しており、転倒を繰り返すことでQOLの低下をきたす高齢者も少なくない。そこで今回我々は、65歳以上で前述した骨折にて当院入院加療した後、転倒のあった群(以下転倒群)となかった群(以下非転倒群)に分け、運動機能評価及び骨密度測定を実施し、比較検討したので報告する。【方法】 対象は、平成23年5月から7月までに当クリニック通院中の高齢者骨折を既往に持つ65歳以上の患者109例(男性14例、女性95例、平均年齢79.9±14.7歳)。転倒群24例(平均年齢79.4歳)、非転倒群85例(平均年齢76.2歳)であった。調査内容として、運動機能評価は開眼片脚立位保持時間(以下片脚立位)、10m最大努力歩行・歩数、Timed Up-and-Go Test(以下TUGT)を各2回測定、良好な結果の方を使用した。片脚立位に関しては最長60秒とした。骨密度測定にはHOLOGIC社製X線骨密度測定装置Discoveryにて、二重エネルギーエックス線吸収測定法(Dual-energy X-ray Absorption、以下DXA)を使用した。結果は若年者骨密度平均値(Young Adult Mean:YAM)の大腿骨、腰椎の値を使用した。検定にはマン・ホイットニー検定、ウェルチのt検定を使用し、転倒群と非転倒群に分け比較検討した。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には本研究の趣旨を口頭にて説明した上で同意を得た。【結果】 片脚立位、10m歩行・歩数、TUGTにおいて有意差を認めた(P<0.01)。YAMにおいては大腿骨、腰椎ともに有意差はなかった。転倒群、非転倒群の運動機能評価平均値は順に片脚立位(8.75秒・24.9秒)、10m歩行(14.7秒・10.1秒)、10m歩数(23.9歩・19.1歩)、TUGT(15.8秒・11.5秒)であった(転倒群・非転倒群)。【考察】 高齢者骨折の既往は骨密度とともに、将来の骨折の重要な予知因子とされている。今回の結果は両群ともに高齢者骨折の既往を持ち、転倒群においては通院期間中に転倒したこと、またYAMに有意差がなかったことから、運動機能の違いによって転倒リスクが生じるものと考えられる。転倒群においては、運動器不安定症の判断基準となる片脚立位、TUGの基準値をともにクリアしていないことも転倒要因と考えられる。年齢、性、家族歴、既存骨折歴などは不可逆的なものであるため、今後の転倒骨折のリスクも考慮し、転倒予防対策やライフスタイルの見直しが重要になってくる。【理学療法学研究としての意義】 近年、高齢者の増加により転倒を原因とした運動器疾患が増加している。年齢を重ねるごとに運動機能の低下、また骨折既往のあるものや骨密度の低下は姿勢の変化を生じさせるため、運動機能を維持、向上させ、如何に転倒を予防するかが示唆された。今回の調査では、転倒群の転倒回数については調査不足であった。今後転倒回数や活動レベルなどの情報収集を行い、運動指導やライフスタイルへの介入も視野に入れていきたい。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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