抄録
【はじめに、目的】 在宅要介護者のケアマネージメントは介護支援専門員(以下ケアマネ)がプランニングの中心を担っている現状にある。そのため、利用者にどのような在宅サービスを提案していくのかはケアマネの視点に懸かっていると言ってよい。在宅サービスの一つである訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)の現状としても、ケアマネから訪問リハの依頼があって初めてその利用者のことを訪問リハ事業所側が把握することが多くあり、受動的な立場であると言える。本研究は、その現状を踏まえ、今後訪問リハ事業所側からケアマネ側へどのような働きかけを行えるのかを模索することを目的に行なった。【方法】 対象は当施設の事業所である居宅介護支援事業所(以下居宅)、地域包括支援センター(以下包括)に勤務するケアマネ13名とした。調査項目は、基礎職種、実務経験年数、リハビリ知識の有無、リハビリ導入に対する積極性、訪問リハ導入経験の有無、訪問リハと通所リハの差異認識、現状の訪問リハ需要量と供給量に対する意識、訪問リハ導入の基準、ケアマネ視点から訪問リハに求めることについて、聞き取り形式での意識調査を行ない、今後訪問リハ事業所側としてケアマネに対してどのような働きかけを行なっていくべきかを介護給付と予防給付の観点から検討した。【倫理的配慮、説明と同意】 ヘルシンキ宣言に基づき調査内容の説明を行ない、同意を得られたケアマネに対して調査を行なった。【結果】 対象としたすべてのケアマネから同意を得て調査を実施した。ケアマネ数は居宅9名、包括4名の計13名であった。居宅ケアマネの基礎職種は100%が福祉系であり、実務経験年数は平均4.1±2.7年、リハビリ知識は自信がないとの回答が89%、リハビリ導入に対する積極性は78%、訪問リハ導入経験は89%がありと回答したが、67%が通所リハのほうが導入しやすいと回答した。地域の訪問リハの需要と供給量に関しては供給量に不足を感じるが89%。訪問リハ導入の基準は身体的・精神的に外出困難事例、病院退院後の在宅生活確立目的という意見が多くみられた。訪問リハに対する要望としては、訪問リハ導入の必要性について事前評価として関わってほしいとの意見が多くみられた。包括ケアマネの基礎職種は医療系と福祉系が50%ずつであった。実務経験年数は6.5±2.1年、リハビリ知識は75%が一応の知識は持っていると回答した。リハビリ導入の積極性は100%が積極的であると回答、訪問リハ導入経験は75%がありと回答し、75%が通所リハに比べ訪問リハの方が導入しやすいと回答した。地域の訪問リハ需要と供給量に関しては供給量に不足を感じるが75%であった。訪問リハ導入基準は通所につなげる前段階、自宅環境への関わりや動作訓練で自宅内での日常生活動作(以下ADL)が向上しそうなケースとの回答があった。訪問リハへの要望としては、介護予防としての運動の習慣づけ、環境面への関わりとの回答があり、単なる機能訓練だけでなく一歩進んだ援助を期待するとの回答もみられた。【考察】 現状として、基礎職種が福祉系ライセンスであるケアマネが多く、リハビリに関する知識が十分でないため、訪問リハ導入の必要性への迷いが生じることが示唆された。また、訪問リハの必要性を感じても、供給量不足のため導入できないことがあるとの意見も多くあり、地域での訪問リハサービス資源の不足も問題であることが示唆された。現在は、ケアマネ側から訪問リハの依頼があって初めて対象利用者のことを訪問リハ事業所側が把握することが多くあるが、今後訪問リハ需要の掘り起こしのためにも事前評価であったり、相談窓口としての機能も果たしていくことで、ケアマネとの相互関係を構築していく必要があると考える。今回、通所リハと訪問リハの導入し易さの比較において、居宅ケアマネと包括ケアマネ間で対照的な回答結果となったことに関しては、要支援者のほうが環境面への関わりや自宅でのリハビリにより比較的ADLが高まりやすいこと、機能訓練・ADL訓練に加えて特に自己実現の部分への関わりにも期待されていることがその要因となったと考える。【理学療法学研究としての意義】 在宅サービスを展開する上で、ケアマネ・関連事業所の他職種との連携は必須である。その中でもケアマネとの連携は非常に重要であるといえる。そのため、ケアマネの訪問リハに対する意識、訪問リハからケアマネ側への働きかけといった相互関係が今後はさらに必要となってくると考える。そのことが、今後訪問リハ需要の掘り起こしや、訪問リハの普及につながっていくと考える。今回、介護給付と予防給付の観点から検討し、介護・予防それぞれのケアマネの訪問リハに対しての要望を比較できたことは、今後訪問リハの発展に貢献すると考える。