抄録
【はじめに、目的】 リハビリテーション(以下,リハ)機能に特化している1時間以上2時間未満(以下,短時間)の通所リハは、要介護者と介護者が物理的に離れている時間が短く、介護負担の軽減効果は小さいことが想定される。しかし近年、在宅でのリハ・サービス利用者や高次脳機能障害患者を対象とした調査において、要介護者のADL能力の状況が介護者の介護負担感に影響を与えているとの報告も認められる。そこで今回、短時間通所リハを利用している要介護者のADL能力の変化が、その介護者の介護負担感に与える影響について検討し、短時間通所リハの役割について示唆を得たので報告する。【方法】 平成23年8月にてA短時間通所リハ事業所(定員20名/日)を6カ月以上利用している要介護者25名から、独居等を除いた20名の要介護者(うち男性12名、平均年齢75.1歳)とその介護者を対象とした。要介護者は要介護1:4名、2:5名、3:7名、4:2名、5:2名で、介護者は妻11名、夫6名、嫁、娘、息子が各1名であった。介護者に対する対面調査を平成23年8~10月に実施した。調査は、要介護者の初期評価時と6ヶ月評価時のFIM運動項目の変化をWilcoxonの符号付順位和検定にて比較し、この変化を基に要介護者をFIM運動項目の向上群(以下,向上群)と不変・低下群(以下,不変・低下群)に二分した。これら二群について、その介護者に対する対面調査を行い、(1)収集した短縮版Zarit介護負担尺度(以下,J-ZBI-8)得点の相違をWilcoxonの順位和検定を用いて検討すると共に、(2)聴取した短時間通所リハ利用開始時からの介護負担感の変化をFisherの正確確率検定にて比較した。さらに介護負担感の増加を訴えた介護者については、その訴えの内容をコード化し、介護負担感の増加原因を分類した。尚、統計解析にはJMP9を用いた。【倫理的配慮、説明と同意】 口頭同意が得られた対象者に対して、本研究の目的と内容を研究者が詳細に説明し、同意書への署名を得た。尚、要介護者が署名困難な場合、介護者に代筆を依頼した。【結果】 要介護者20名のFIM運動項目の得点は、初期評価時60.1±15.8点、6カ月評価時62.6±14.6点にて有意な向上が認められた(P<0.05)。これら要介護者をFIMの改善状況によって二分すると、向上群8名、不変・低下群12名であった。2群間における要介護者の年齢、性別、脳血管障害の有無、要介護度、利用期間、さらに介護者の年齢、性別、介護形態による差異は認められなかった。調査時点でのJ-ZBI-8得点は、向上群の介護者において11.1±8.7点、不変・低下群の介護者で6.8±8.3点であったが両群間で有意差を認めなかった。一方、介護者が表明した介護負担感の変化は、向上群で「減少」が3名(37.5%)、不変・低下群の「減少」は5名(41.7%)で、両群間に有意な相違を確認することは出来なかった。聞き取り調査の内容より、介護負担感増加は、認知症による問題行動(3名)、パーキンソン病の日内変動(2名)、失語症によるコミュニケーション障害(1名)、経済的問題(2名)に起因することが明らかとなった。【考察】 高齢者リハ研究会の中間報告(平成16年)では、通所リハの役割の1つに介護負担の軽減を挙げている。介護負担感には被介護者要因、介護者要因、介護者-被介護者関係および外的要因が考えられている。今回の結果から短時間通所リハによる介入が、被介護者要因である利用者本人のADL能力改善には有効であるものの、介護負担軽減までには波及していない現状が明らかとなった。個別リハの実施が必須項目となっている短時間通所リハは、退院・退所直後の急激な環境変化への適応や在宅生活を継続しながら突発的な身体機能の低下に対応する場合、最もサービス効果を発揮できるものと想定される。したがって、サービスの特徴と限界を理解し、直接的支援だけでなく間接的支援も考慮に入れながらサービス提供を進めなければならない。具体的には、要介護者の生活機能の向上が得られた場合、速やかにケアマネージャーと協議し、さらなる介護負担軽減が必要であれば、サービス移行を目指したサービス間連携に努めることが重要と考えられる。【理学療法学研究としての意義】 本研究は、要介護者のADL能力改善だけでは介護負担軽減に貢献することが難しい現状を明らかとし、短時間通所リハにおけるサービス間連携の必要性の根拠を明確化することが出来た。