抄録
【はじめに、目的】 一般的に脳性麻痺児では運動発達年齢やADL自立度が低いと介護者の心身的負担が大きい.渡部らは,肢体不自由児を持つ介護者の負担は非常に大きなもので心身的疲労を訴えることが多いと報告している.しかし,脳性麻痺児に限局した研究はきわめて少ない.脳性麻痺児の場合,姿勢反射障害などにより,特有の介護の困難さがあるため,介護負担度に相違が認められると我々は考えた.本研究では脳性麻痺児に限局して介護の現状に対してアンケート調査を実施し,運動発達年齢によって身体的負担と精神的負担の関係について明らかにし,脳性麻痺児を持つ介護者に対しての指導への一助とする.【方法】 A県内の特別支援学校に在籍している脳性麻痺児の保護者95人に対しアンケートを実施した.精神的負担については,日本版zarit介護負担尺度を一部改変して使用し,身体的負担と介護サービスについては土岐らの使用したアンケート項目を一部改変して,それらに関する質問を作成した.アンケート項目は脳性麻痺児とその介護者の基礎情報,脳性麻痺児の運動発達年齢,ADL自立度,心身的負担,介護サービスについての5項目,下位項目は96項目である.評価方法は精神的負担とADL自立度を5段階評価,身体的負担と発達状態を2段階評価で行った.特別支援学校の職員から保護者に配布してもらい,記入後は職員に回収してもらい,後日研究者が受け取った.結果は数値化した.統計処理はSPSS Statistics20を利用しスピアマンの順位相関係数を用いて相関分析を行った.有意確率は5%未満とした.【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には研究に際し,その目的の趣旨を文書により説明し,アンケートの回答をもって同意したものと判断した.【結果】 アンケートは95人中32人が回答し(保護者は男性1人,女性31人,平均年齢は43.7±5.7歳),回収率は33.7%であった.脳性麻痺児は男児19名,女児13名であり平均年齢は14.1±3.4歳であった.各項目の平均値は運動発達年齢8.63ヶ月,身体的負担1.96,精神的負担1.92であった.運動発達年齢と身体的負担との関係はr=0.480(p<0.05),運動発達年齢と精神的負担の項目で介護者が自分の時間が取れないはr=-0.354(p<0.05),介護者の社会参加の減少はr=-0.436(p<0.05)であり,総介護時間ではr=-0.444(p<0.05)であった.【考察】 本研究の結果から,運動発達年齢が低いほど介護者への身体的負担が増えることについては,総介護時間が長くなることからも,介護に入る場面が多いことや介助量が増えることから身体的負担を抱えていることが示唆された.また,精神的負担については一日の中で介護に割かれる時間が多く,介護者自身の時間が減っていると考えられ,介護により外出する機会も減り社会参加の機会が減少しているのではないかと考えられた.【理学療法学研究としての意義】 脳性麻痺児の保護者の身体的および精神的負担を明らかにすることは,介護者の支援の一助になると思われる.