理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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一般演題 ポスター
独居高齢者における居住様式の違いが要介護度の変化と活動能力および転倒に及ぼす影響
─18ヶ月間の縦断研究より─
井戸田 学古川 公宣
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キーワード: 独居高齢者, 居住様式, 転倒
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p. Eb0617

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抄録
【目的】 平成23年度版高齢者社会白書によると,65歳以上の独居高齢者は女性の比率が極めて高い.しかし今後は,男性の独居高齢者の割合が大きく伸びることが見込まれており,独居高齢者は全体に増加傾向を示している.高齢者が地域で生活し,社会との関わりを持ち続けていくためには,個々の身体機能に対応できる住環境整備が必要である.近年の高齢者向けの住宅施策は,新築住宅に対してはバリアフリー化,既築住宅に対しては改修支援の推進であり,それに伴い居住様式は和式から洋式へと移行している.独立した住宅に一人で暮らしている高齢者にとって,居住様式は重要な住環境問題のひとつであるといえる.本研究の目的は,独居高齢者における居住様式と要介護度,活動能力,転倒との関連性について検討することである.【方法】 平成22年4月1日から平成23年9月30日までの18ヶ月間,追跡が可能であった65歳以上の独居高齢者のうち,居住様式に変更がなかった42名(男性6名・女性36名,平均年齢82.8±4.2歳)を対象とした.対象者の条件としては認知機能に問題がなく,屋外歩行が自立レベルにある者とした. 居住様式は,内閣府政策統括官共生社会政策担当による「高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査」(2005)の調査項目に準じ,食事・くつろぎ・就寝のスタイルによって対象者を和式群22名と洋式群20名に分類した.ベースライン時と18ヶ月後の要介護度,老研式活動能力指標(以下,TMIG index),追跡期間中の転倒経験の有無について調査した. 分析は,居住様式と要介護度の変化との関連,両群間におけるTMIG indexの比較についてMann WhitneyのU検定,各群におけるTMIG indexの変化についてWilcoxonの符号順位検定,居住様式と転倒との関連についてχ二乗検定を行った.いずれも有意水準は5%未満とし,統計処理にはSPSS ver.12 for Windowsを使用した.【説明と同意】 対象者には事前に口頭および書面にて本研究の趣旨および個人情報の保護について説明し,十分な理解を確認した後,書面で同意を得て実施した.【結果】 要介護度の変化は,和式群:改善4.5%(1/22名),維持68.2%(15/22名),悪化27.3%(6/22名),洋式群:改善5.0%(1/20名),維持80.0%(16/20名),悪化15%(3/20名)であり,居住様式との関連は認められなかった(P=0.384).TMIG indexは,両群間に有意な差はなく(ベースライン時:P=0.778,18ヶ月後:P=0.909),また各群においても有意な変化は認められなかった(和式群P=0.052,洋式群P=0.066).居住様式と転倒経験の有無については有意な関連が認められ(P=0.031),和式群は洋式群よりも転倒経験が少なかった.【考察】 要介護度は,対象者全体で4.8%(2/42名)が改善,21.4%(9/42名)が悪化へと変化した.今回,居住様式と要介護度の変化との関連性は認められなかったが,自立および要支援1・2がベースライン時:92.9%,18ヶ月後:88.1%を占め,先行研究と同様に独居生活の継続には要介護度が大きく影響していることが確認された. TMIG indexを用いて居住様式と活動能力との関連を検討したが,両群間における差や各群での変化は認められなかった.活動能力に影響を及ぼす因子としては認知機能と空間的移動能力が挙げられるが,本研究の対象者については追跡期間中の認知機能や移動能力に著変はなく,居住様式が直接的に活動能力に及ぼす影響は少ないことが示唆された. 一方,和式群は洋式群よりも転倒リスクが低いことが示された.和式群においては,畳や床の上で座卓を用いて食事を摂ったり,くつろいだり,就寝したりしているため,床からの立ち上がり動作をあらゆる日常生活場面で繰り返し行っていることが推察される.その遂行には洋式生活に比較して十分な関節可動性,筋力,バランス能力などが必要とされる.そのため日常的に床からの立ち上がり動作を行っている和式群においては,下肢筋力をはじめとした多様な身体機能の維持および向上が図れており,洋式群よりも転倒経験が少ないことが示唆される結果になったと考えられる. 転倒により外出の制限などが生じれば,認知機能や活動能力の低下を招き,それが要介護度の重度化,独居生活の継続困難,さらには地域社会への参加制約となることが危惧されるため,常に身体機能や生活状況に即した住環境整備を検討していくことが必要である.【理学療法学研究としての意義】 本研究により,要介護度や活動能力に差がなくても,居住様式の違いにより転倒率に差が生じることが示された.和式生活は日常生活そのものが機能訓練的要素を持ち,高齢者の身体機能維持に役立っていると考えられ,居住様式への適時かつ詳細な介入により,転倒率を低く抑えることができる可能性が示唆されたことは意義深いと思われる.
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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