理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
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バーチャル機器を使用したトレーニングの導入について
井上 和久原 和彦河原崎 崇雄菅原 壮平望月 あおい中村 岳雪丸岡 弘
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p. Ed0825

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抄録
【はじめに、目的】 バーチャル機器の一つであるバランスWiiボードは、体重・BMIや重心バランスの測定、様々なトレーニングが実施できる機器の一つである。海外においても健康増進・平衡機能向上・健康なライフスタイル等についてWiiおよびWii Fitを使用したトレーニングの効果について検証されている。しかし、国内においてはバーチャル機器を利用した運動効果、特に生活習慣病予防に関する科学的エビデンスは少ない。これらの研究結果が今後新しいスタイルの健康管理システムになる可能性がある。これまで、我々はバーチャル機器であるWiiを使用し、Wii Fitでのバランストレーニング効果およびWii Fit Plusでのトレーニング効果について検討したので報告する。【方法】 対象は、骨・関節系の既往歴のない若年健常成人32名(バランストレーニング群10名:以下BT、バランストレーニングコントロール群10名:以下CBT、複合トレーニング群12名:以下CT)および患者・利用者8名とした。使用機器は、重心動揺計、Wii本体、Wii Fit、Wii Fit Plus、バランスWiiボード、体重体組成計、デジタル長座体前屈計、リアクションBGを使用した。BTは、バランスWiiボードでWii Fitのバランストレーニング(9種類)を20分間実施し、トレーニング前後に静的重心動揺計にて重心動揺(開眼閉足30秒:総軌跡長・単位面積軌跡長)を測定した。バランストレーニングは、1週間のうち被験者の任意の3日間(1日1回20分間)実施させ、それを4週間継続的に実施した(計12日間:240分)。CBTは、Wii Fitでの身体測定(静的立位重心動揺・バランステスト・BMI)、身体測定直後に静的重心動揺計にて重心動揺を測定した。測定は、1週間のうち任意の3日間(1日1回)を実施し、それを4週間継続的に実施した(計12日間)。CTは、身体測定(体重、基礎代謝、柔軟性、BMI、腹囲、棒反応)と静的重心動揺計にて重心動揺をトレーニング開始前、開始2週間後、開始4週間後の計3回実施した。トレーニングは、Wii Fit Plusのトレーニングを1日1回30分間実施した(1週間のうち被験者の任意の3日間実施、4週間継続的に実施:計12日間約360分)。患者・利用者は、若年健常者と同様で、Wii Fit Plusのトレーニング内容について事前に被験者らの担当者と十分打合せを行い、転倒・リスクが少ないトレーニング7種類を1日1回15分間実施した(1週間のうち任意の3日間、4週間継続実施:計12日間約180分)。さらに、Wii Fit Plusの体験が被験者にどのような行動変容があったか無記名アンケートを実施した。統計処理は、IBM SPSS Statistics Ver.19.0を使用し、ウィルコクスンの符号付順位検定を行い、有意水準は危険率5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は、ヘルシンキ宣言に則り被験者に研究の目的や手順を説明して署名による同意を得た。また、所属する職場の倫理委員会の承認を得て実施した(第22014号)。【結果】 BTのバランストレーニング効果は、トレーニング開始前と開始1・2・3週間後とにおいて有意な差が認められた(単位面積軌跡長:p<.05)。CBTは、開始前に比べ開始2・3・4週間後において有意差が認められた(総軌跡長:p<.05)。CTは、トレーニング実施前後においてトレーニング開始前と開始2・4週間後において有意な増加傾向が認められた(総軌跡長:p<.05)。患者・利用者は、トレーニング実施前後において、基礎代謝・柔軟性・BMIがトレーニング前後で有意な増加を認めた(p<.05)。アンケート結果からは、「普段の生活に少しでも変化があった」、「少しでも運動を実施したい」という回答が8割以上得られた。【考察】 バランストレーニング効果は、重心を細かく制御するパラメータの単位面積軌跡長に増加傾向が認められた。Wii Fitのバランストレーニングとして主にバランスWiiボード上で前後左右の重心移動によりゲーム感覚で得点を競うトレーニングの特性が反映されたと考えられた。また、アンケートの結果からバーチャル機器はただ運動するだけではなく愉しくトレーニングをする事により継続的に運動をつづけたいという回答が得られ、運動習慣がない健常人でも普段の生活にも変化があったことから運動習慣を身につける良い機会になる事が示唆された。【理学療法学研究としての意義】 今後、このようなバーチャル機器によるトレーニング効果が立証できれば臨床現場でのトレーニング機器として活用、また障がいのない健康の方に対しても健康増進になりうる。
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© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
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