理学療法学Supplement
Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
会議情報

一般演題 ポスター
長期臨床実習中に設けた登校日の在り方と意義について
─学生への調査から─
藤平 保茂久利 彩子藤野 文崇小枩 武陛古井 透酒井 桂太
著者情報
キーワード: 臨床実習, 登校日, 学生指導
会議録・要旨集 フリー

p. Gb1440

詳細
抄録
【はじめに】 臨床実習(以下、実習)は、理学療法士を目指す学生にとって臨床での理学療法を経験できる重要な学外授業であり、実習に臨む学生は、臨床実習指導者(以下、指導者)の指導のもと、さまざまな経験を通して成長していく。大阪河﨑リハビリテーション大学(以下、本学)では、3・4年次にそれぞれ8週間の長期実習を実施している。その中で、実習開始第3もしくは4週目の土曜日に、「中間登校日(以下、登校日)」と称する登校日を設けている。これは、学生に対し、実習中での現状を整理させ自らの問題点と今後の対応策を把握させること、慣れた学び舎にて心身をリフレッシュさせる目的を持っている。本研究では、登校日の在り方や意義について学生の考えを調査し、長期実習中に設けた登校日の在り方と意義について検討、考察することを目的とした。【方法】 <対象>本研究に同意を得た本学の4年次実習(期間は、平成23年6月からの8週)を終えた40名(男性20名,女性20名)の学生であった。<調査票>筆者らが作成した調査表で、質問内容は、1)中間登校日に登校したか(2項択一回答)、2)登校日に来て良かったと思ったか(3項択一回答)、3)2)に対し、何故そう思ったのか(自由回答)、であった。調査は、実習終了後初の登校第1日目に実施した。<集計>得られた回答に対し記述統計を行い、自由回答を整理した。なお、指導者には事前に登校日の目的と日程を説明し、「登校日は必ず出席するものではなく、学生の能力や実習の進行状況、指導者の勤務状況に応じて、実習優先を原則としています」と説明した。学生には、登校日の日程を知らせ、原則実習を優先すること、実習がない場合はできるだけ9時に登校するよう指導した。【説明と同意】 本研究は、本学の倫理委員会規則に従うもので、研究にあたっては、対象者に本研究の主旨を説明し同意を得た。 【結果】 登校日に出席した学生(以下、出席者)は32名(全体の80%)で、欠席した学生は8名であった。出席者のうち、登校日が良かったと答えた者は22名(出席者全体の68.8%)、どちらでもないと答えた者は9名(出席者の68.8%)、良くなかったと答えた者は1名であった。欠席理由として、課題が多くレポートを仕上げられそうになかったから、寝不足が続いていたので少し休みたかったから等の自己都合による意見と、実習日であったため、他県にある遠方の実習地であったため出席できなかった等、環境的因子によるものがあった。登校日を支持する意見では、「他の学生と関わることで他の学生がどの程度実習を進めているか等の情報を収集することができ、不安な気持ちを落ち着かせることができた」、「自分と同じ担当症例の学生が居れば、どんなことをしているか、自分が悩んでいること等の相談ができた」、「担当教員と話をすることで、自分の課題を認識し、後の取り組みに活かすことができた」、「実習の半ばで気が緩みがちな時期に登校日があり、教員の話を聞くことで気持ちのリセットができた」、「前半の1ヶ月は登校日を楽しみに頑張った」、「『実習が半分終わった』と思え、教員からの激励により残りを頑張ろうと思うことができた」、「本来土曜日は実習だったが、登校日のおかげで実習の休みをもらえ、体を休めることができた」、「登校日でなければ学校に戻る機会がなかった」、等の意見があった。一方、非支持意見では、「時間をかけて学校に行ってもすぐに終わってしまった」、「休みの日に朝早く起きて来るだけの内容ではなかった」、「通学するだけで疲れた」、「その時間でもっと学習できたのではないか」、「実習の進行状況や実習地などによって登校日の良し悪しは変わる」、等の意見があった。【考察】 支持意見から、仲間と会うことで実習へのより強い動機付けや励みとなったこと、登校日を後半へのターニングポイントと位置付けていた学生がいたことが伺え、学生にとって登校日は有意義なものであるものと考えられた。また、教員が望む目的に沿う意見を確認できたことでその意義が学生に理解されていることが伺えた。一方、非支持意見から、登校日の内容を充実させること、当日の内容の工夫や開始時間等、改善すべき点が確認できた。教員は、実習の最中に設ける登校日は学生にとって以後の実習をより充実させるための起点と考え、学生からの個別の支援をも合わせて実施することで、登校日の意義がより高まるものと思われた。【理学療法学研究としての意義】 本研究は、学生への臨床実習における教育的効果を高めるとともに、教員にとっても学生支援を円滑に実施するための一手段になると考えられる意義のある研究である。
著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top