抄録
【はじめに、目的】 当院はNTT東日本の病院として高度の先進医療を提供し、地域の医療連携の中核を担う病院として日々の診療に努めている。当院の基本方針のひとつに「世界的視野に立った最新の技術に基づき最高の医療の提供」が掲げられ、2011年3月にJOINT COMMISSION INTERNATIONAL(国際版医療機能評価、以下JCI)の認定を取得し、国内で2番目、東京都内では初めての認定施設となった。JCIの審査では書類審査のほかに、PDCAサイクル(業務の計画・実践・評価・見直し)を病院スタッフにインタビューする事で確認評価するという実践的な方法で行われた。リハビリテーション科(以下、当科)に於いても全スタッフがインタビューの対象であり、業務に関してスタッフ間での統一した回答を求められた。業務の実施にあたっては、マニュアルに基づいて行われていることが前提となるため、リハビリテーション部門における業務マニュアルを国際基準に対応できるよう改定を行なった。今回、国際基準に対応した業務マニュアル改訂の経過について報告する。【方法】 業務マニュアルの改訂は、(1)JCIにより定められた国際認定基準よりリハビリテーションに関連する項目(以下、関連項目)を抽出。(2)既存の業務マニュアルを関連項目と照合し、必要な項目を追加。(3)各業務内容の記載方法の見直し。(4)変更点についてスタッフへの周知、の順に行なった。【倫理的配慮、説明と同意】 今回の報告はヘルシンキ宣言に沿った研究であり、JCIの著作権を配慮し行われている。【結果】 (1)関連項目は、概要(基本理念・方針・役割等)、リハビリテーション(以下、リハ)の日常業務(患者のスケジュール管理等)、医療安全(防災・設備・リスクマネジメント等)、疾患(ハイリスク患者・病態・障害の理解等)に関するものに大別された。(2)概要とリハの日常業務に関する項目は大きな変更はなかった。医療安全項目は防災に加え、感染・吸引などの衛生に関する項目を追加した。疾患に関する項目は新規に作成し、リスクに関する知識を有してリハを実施していることを示すために「疾患別リハビリテーション」として掲載した。(3)各業務内容については、PDCAサイクルの手順がわかるよう実施のタイミングや記録方法について明確にした。医療安全項目は、リハ室周辺の防災設備の設置個所や、火災・地震などの災害発生時における科内の役割分担などを具体的に示した。(4)スタッフへの周知は、まず院内共通マニュアルを周知し、全職員共通の考えや手順の理解向上を図った。院内マニュアルも国際基準に改定され、院内の電子カルテ端末でいつでも閲覧可能となっている。院内共通の手順を踏まえた上で、業務マニュアルの勉強会を定期的に実施し理解向上を図った。【考察】 国際安全基準では、「リスクのある患者の状態を理解して治療を実施している」ことが求められ、スタッフ間の手順にばらつきがないことが質の高い医療とされている。国際基準に則り作成された当院の治療指針をベースに、リハビリテーションの業務マニュアルを見直し、全スタッフに周知することで、どのスタッフにおいても質の高いケアを提供することができるようになったと考える。また、医療だけでなく防災・設備面の基準も求められ、院内・部署マニュアルともに具体的な手順方法を示すことで、災害などの緊急事態における各スタッフの役割分担が明確になったと思われる。今回、業務マニュアルにPDCAサイクルがわかるように明記することで、「○○について知っているか」「いつ行うのか」「どこに書いてあるか」が統一され、業務の均一化につながった。次回の審査においてもマニュアルに沿った業務の実施を継続していれば、高い質の医療を個別間のバラツキがなく実施していることを説明することができると考える。【理学療法学研究としての意義】 国際基準に対応した病院での業務を報告することは、今後国際基準を取得する施設における理学療法業務の参考になるとともに、理学療法士全体の医療の質の向上に役立つものと考える。