日本臨床外科学会雑誌
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症例
大網脂肪織炎治癒後に発症した被嚢性腹膜硬化症の1例
米永 吉邦三瀬 昌宏矢田 善弘森本 智紀花木 宏治東出 俊一黒澤 学佐藤 滋高
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2015 年 76 巻 6 号 p. 1515-1520

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抄録

症例は80歳,男性.2012年9月に大網脂肪織炎を発症,ステロイド加療で軽快した.ステロイドは2013年1月まで使用した.2月から腸閉塞を繰り返した.この間のCTにおいて,小腸の拡張の程度は変化がみられるものの小腸の位置関係に変化が見られないこと,下腹部の被包化されたような構造も同様に見られることより,癒着性の膜様構造物により小腸が被包化される被嚢性腹膜硬化症と診断した.腸閉塞を反復するため4月に開腹手術を行った.開腹すると小腸全体が白色調の肥厚した被膜に覆われ,下腹部では強固に後腹膜・膀胱に癒着しており,左上腹部では壁側腹膜と強固に癒着していた.肥厚した被膜は可及的に切除し,全小腸の癒着を剥離した.術後経過良好で,腸閉塞を再発することなく術後38日目に転院した.今回,大網脂肪織炎に続発した被嚢性腹膜硬化症の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

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© 2015 日本臨床外科学会
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