抄録
【はじめに】COPD患者が在宅での呼吸リハビリテーション(以下呼吸リハ)を行うにあたり,介護支援専門員(以下CM)との連携は重要である.しかし,CMのCOPD,呼吸リハに関する認知度は定かではないため,現状を把握すると同時に認知度に与える要因を検討する必要性が感じられた.今回,当院所在地域のCMに対しCOPD,呼吸リハの認知度等についてアンケート調査を行い,現状と今後の課題について検討したので報告する.【方法】対象は,N市A区(人口約7.8万人)の地域包括支援センター,居宅介護支援事業所,全27施設に勤務しているCM73名.調査項目は,COPD,呼吸リハの認知度,それぞれの学習経験の有無,CM以前の基礎資格等であり,アンケート調査には自己記入式質問紙を用いて郵送法にて実施.本研究では基礎資格が看護師や薬剤師等を「医療系CM」,介護福祉士や社会福祉士等を「福祉系CM」と呼ぶこととし,基礎資格による認知度の違いを検討した.認知度と学習経験の有無や基礎資格の関連性についてはカイ二乗検定法を行った.なお,統計学的有意水準は1%とした.【説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき調査内容について書面で説明を行ない,同意を得られたCMに対して調査を実施した.【結果】回収率90.4%,有効回答65名,無効回答1名,有効回答率89.0%であった.CM全体では,COPDに関して「認知度あり」は70.7%,「学習経験あり」は38.5%であった.呼吸リハに関して「認知度あり」は38.4%,「学習経験あり」は9.2%であった.「学習経験あり」のみで分類すると,COPDの「認知度あり」は100%,呼吸リハの「認知度あり」は100%であり,学習経験の有無が認知度に影響していた(p<0.01).CM対象の学習会参加機会の有無に関しては,「機会あり」が3.0%,「機会はあったが参加しなかった」が3.0%,「機会なし」が93.8%であった.CM以前の基礎資格で分類すると,「医療系CM」が30.8%,「福祉系CM」が60.0%,無記名等が9.2%であった.COPDに関して,「医療系CM」の「認知度あり」は80.0%,「福祉系CM」の「認知度あり」は74.3%であり,基礎資格による認知度の関連性は認められなかった.一方呼吸リハに関しては「医療系CM」の「認知度あり」は80.0%,「福祉系CM」の「認知度あり」は20.5%であり,基礎資格と認知度に関連性が認められた(p<0.01).【考察】CMのCOPDの認知度に比べ,呼吸リハの認知度に関しては極めて低い現状が把握できた.その要因として,学習経験の有無が影響していると考えられたが,CM対象の学習会の機会がほとんどないことが判明した.さらに,基礎資格による違いを検討することで,「福祉系CM」は呼吸リハに関して特に認知していない現状が把握できた.呼吸器分野や理学療法分野においては,COPDに対する呼吸リハの有効性は十分認識されてはいるが,地域で働くCMに対してはまだ浸透していない可能性は十分に考えられる.また,CMの特徴である基礎資格を考えると,これまでの学習経験や臨床業務では呼吸器分野や理学療法分野に触れてこなかったCMがいることも予想され,今回の調査結果のように基礎資格による認知度の違いが認められたと考えられる.増加しているCOPD患者の背景からも,在宅で生活をする要介護者は増加し,その際に介護サービスを統括するCMは呼吸リハの橋渡しとしても重要になってくると思われる.そのため,基礎資格等に関係なくCM全体のCOPD,呼吸リハに関する認知度を上げていく必要性が感じられた.【理学療法学研究としての意義】今回の調査は当該地域としては初の試みであり,地域でのCOPDに対する呼吸リハを推進するために意義のある研究と考える.また,地域連携を強化していくためには,CMを対象とした学習会等を行い,まずは当該地域で啓発活動を行っていくことが重要と感じられた.今回の調査結果をもとに,アンケート回収5ヶ月後には医師,看護師と連携し,1回目のCM対象学習会を開催することができた.地域での包括的呼吸リハを提供するためには,CMだけでなく多職種との連携が必要でありまだまだ課題もあるが,その足がかりとなることができた研究でもあったと考える.