抄録
リパーゼ (triacylglycerol acylhydolase) は, トリアシルグリセロールの, グリセロールと脂肪酸のエステル結合を加水分解する酵素である。固定化リパーゼの利用として, エステル交換が広く知られている。
アニオン交換樹脂に固定化されたRizomueor mieheiの1, 3位特異性リパーゼ (Lipozyme RM IM) の性質が調べられた。酵素の活性は, 水分量, 反応温度, 有機溶剤の種類, 基質アルコールの違い (炭素鎖長・一価/二価) 及び担体の粒度に影響を受けた。酵素の熱安定性は, 固定化により著しく増加した。また, カラムで使用した場合の活性の半減期は1600時間であった。
Candida antarcticaのBリパーゼを新しく開発された安価なシリカゲルをベースとした担体に固定化したものと, 同酵素を多孔性アクリル樹脂に固定化された市販のリパーゼ (Novozyme435) のエステル合成活性が4つの異なった反応で比較された。シリカゲルベースのものは市販品に比べて, 反応速度が遅いことが示され, 担体の選択の重要性が示された。
遺伝子操作を用いて酵素の収率を向上させた微生物を用いて生産されたThermomyces lanuginoseの1, 3特異性リパーゼが安価なシリカゲルベースの担体に固定化され, 安価な油脂 [マーガリン等] のエステル交換への応用が検討された。ケミカル法と比較して, 酵素の1, 3特異性のため, 生成物では, 原料由来のグリセロールの2位の脂肪酸がより多くその位置に残存することが示された。固体脂含量ではほとんどその差がなく, マーガリンの製造に使用しうることが示された。
3つの異なった市販固定化リパーゼの性質がまとめられた。