理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: G-P-11
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ポスター発表
当施設におけるシルバーカー使用者の監視有無の判断基準について
髙橋 優子眞保 実町田 みどり
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キーワード: 高齢者, リスク管理, 注意
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抄録
【はじめに】 高齢者の施設において事故を未然に防ぐために、職員は対象者の転倒や周囲への衝突などが予測される高齢者への監視が必要となる。しかし職員数や業務シフトの関係などからも限界があり、安全な行動が可能な高齢者に対しては常時の監視を外すこともある。転倒予防と関連して移動能力に関する危険性を判断するために理学療法士に意見を求められることが少なくない。しかし移動に介助を要しない対象者に対しての判断は運動能力だけでは困難なことがある。当施設においては施設内を移動する手段の一つとしてシルバーカーを用いているが職員の監視除去については明確な基準がなく、最終的には各専門職種の意見を統合して判断している。本研究では監視除去の明確な基準作りの過程において過去に判断された事例を検証し、監視の除去における要素を考察した。【方法】 対象は当施設に入所しているシルバーカーを使用した歩行に介助を要しない高齢者12名とした。内訳は歩行の際に監視を要しない群(自立群)5名(男性1名、女性4名、平均年齢87.0±5.1歳)と監視を要する群(監視群)7名(女性7名、平均年齢85.4±5.5歳)とした。なお監視の有無の判断については本研究開始以前に当施設職員会議にて決定されたものである。評価項目は身体機能として両側握力、認知機能として長谷川式簡易知能評価スケール改訂版(HDS-R)、ADL評価としてBarthel Index(BI)、転倒評価として島田らの転倒関連行動測定表、注意行動評価としてBahavioral Assessment of Attentional Disturbance(BAAD)を用い、各群に評価をした。BAADは豊倉らが注意障害の行動評価の指標として考案し、日常の動作から覚醒、持続的注意、選択的注意の観点から6項目4段階(3点満点)で評価したものであり、高得点ほど注意行動に問題があるとしている。評価項目の選定にあたっては今後他職種と協同で測定することや対象者への負担を軽減することを考慮し簡便で日常活動の観察から得られるものとした。統計処理はエクセル統計を使用し、対応のないt検定で比較検討した。【倫理的配慮】 本研究を行うにあたり対象者およびその家族に研究内容や個人情報保護等に関する説明を行い、同意を得た。【結果】 握力、HDS-R、転倒関連行動測定表において有意差はみられなかった。BIは自立群平均75.0±7.9点、監視群平均62.9±8.6点で有意差が見られた(p<0.05)。BAADは合計点では有意差はみられなかったものの、各項目の比較では覚醒の要素である「活気がなく、ボーっとしている」が自立群平均0.8±0.8点、監視群平均2.3±0.8点、選択的注意の要素である「動作の安全性への配慮が不足、安全確保ができていないのに動作を開始する」が自立群平均1.2±1.6点、監視群平均3.0±0.0点とともに有意差を示した(p<0.05)。【考察】 本研究で対象としたシルバーカーでの歩行は、歩行を含めた運動能力のほかに道具の操作性として手順の記憶や周囲の人への安全を配慮する注意能力が必要となる。結果から運動の要素としての握力と記憶を含めた認知の要素としてのHDS-Rでは差が見られなかった。しかしBIについては差がみられ、動作の可否としての要素よりもその作業を実践するための手順や安全性などの要素からの差として推測できる。そこで動作以外の要素を検討するためにBAADによる評価を実施し、2項目においての差が見られた。特に選択的注意の要素である「動作の安全性への配慮が不足、安全確保ができていないのに動作を開始する」は対象者の運動能力よりも活動の注意度を測っていることから、シルバーカーの監視除去に関する判断の要素として、動作の安全性を客観視する方法の一つして活用できるのではないかと考える。本研究において安全性への評価が重要であることは認識できたものの、評価として動作の種類や場面などの特定には至らず、さらなる研究が必要と考えている。これらの指標が明確化することにより施設内における事故の防止や施設運営を円滑化することにつながり、対象者が快適に過ごせる援助の一つとして貢献できるものと考えている。【理学療法学研究としての意義】 施設管理の上で対象者の事故防止に努めなければならない。より早く速やかに防止をする手段として安全性への評価が重要であり、これらを客観視できる指標として活用することが期待できる。
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© 2013 日本理学療法士協会
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