理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: G-P-06
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ポスター発表
臨床実習指導者の現状と過去の比較
-アンケート質問紙法による意識調査より-
二宮 省悟濵田 輝一吉村 修楠元 正順木下 義博
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抄録
【はじめに、目的】学校教育の中で、臨床実習が学生に大きな影響を与えることはこれまでも多く論じられてきた。臨床実習指導者(以下、SVと略す)の学生教育に対する意識により、学生の成熟度は大きく変化する。現在の臨床現場を捉え、実際どのようなことが起こっているのか把握することは重要である。また現在と過去との比較を行い臨床教育現場の変化を把握することは、今後の教育戦略に結びつく。今回、10年以上の教育現場としての歴史を持つ臨床実習施設に対し、現状把握を行うと共に、10年前の過去との比較を行ったのでここに報告する。【対象と方法】現状の教育現場の把握として、3施設52名のPTにアンケート質問紙法を行った。アンケート記入は無記名で、過去に学生指導をしたことがあるPTを対象とした。不適切とみなせる処理として、項目の未記入者は除外し、また回答の信頼性保持の為の社会的望ましさ尺度で不適当と判断されたものは除外した。集計はMicrosoft Excel 2010を用い、統計処理はIBM SPSS Statistics19を用いて有意水準1%で行った。【倫理的配慮、説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき、アンケート対象施設に対し、口頭および文書にて研究主旨を十分説明し、同意を得られたもののみ対象とした。【結果】回答は48名(回収率92.3%)で、そのうち過去に学生指導をしたことがあるPTを分析対象とした。有効回答は34名(男:22名、女:12名)であった。 臨床経験年数は9.4±1.1年(平均±S.E.M)。指導経験年数はSV 5.0±0.9年、CVは5.1±0.8年であった。直近1年間の指導学生人数は、6.0±0.9人であった。1)学生教育への関心については、関心あり28名(82.4%)関心なし5名(14.7%)、無回答1名(2.9%)であった。2)実習指導へのやりがいについては、やりがいを感じる28名(82.4%)、感じない4名(11.8%)、その他2名(5.9%)であった。3)指導で困ったことはあるかの有無については、困ったことがある32名(94.1%)、困ったことがない1名(2.9%)、無回答1名(2.9%)であった。4)指導に困った理由(複数回答可)については、学生の資質の問題24名(27.9%)、指導に自身がない21名(24.4%)、学生の問題がつかみにくい12名(14.0%)指導方法が分からない9名(10.5%)、指導時間が少ない9名(10.5%)、学校側の背景が分かりにくい6名(7.0%)、その他4名(4.7%)であった。困ったことへの相談相手としては、60.8%が上司や先輩へ相談していた。また、10年前の過去データと現在を比較した場合、Chi-square testでは設問1)、2)、3)は有意差がなく、4)に関しては、過去よりも現在のほうが有意に「学生の資質の問題」と回答した指導者が多かった(P<0.01)。【考察】今回のアンケート調査では、回答数の約8割が学生教育への関心を持っており、また7割以上が指導に関しやりがいを感じ、10年前の過去と同様の傾向となった。同時に指導で困ったことがある指導者は8割を超え、臨床実習指導の困難さを知ることができた。10年前の過去データでは67.8%に学生教育への関心があったが、現在はさらに15.2%増加していた。また、今回の調査では指導に困った理由として、第1位に「学生の資質の問題」が挙がってきているが、10年前は「指導に自身がない」が挙けられていた。現在の臨床実習教育では、指導方法よりも「学生の問題」について問題視されることが浮き彫りとなった。また、相談相手として養成校の教員よりも上司や先輩がキーマンとなることが明確になった。学生の資質の問題は、臨床実習だけの問題でなく、学内教育や、入学者の選定という部分にも関わる大きな問題であることは間違いない。これからも引き続きSVと養成校が手を取り合っていく必要があるが、今回の調査では、PTになるために必要な「学生の資質」とはなにかを養成校で十分に教育する必要があることが示唆された。今後も、調査エリアを拡大し、臨床実習現場の現状把握を行い、「学生の資質をどう捉え、どう指導していくか」を考え、臨床実習教育を見直し、臨床実習施設と養成校がタイアップしてよりよい教育システムの構築を目指していきたい。【理学療法学研究としての意義】指導者の現状を把握することは、理学療法教育にとって必要である。また、過去の状況との比較により、臨床教育現場の変化を捉えることは、今後の臨床実習教育に貢献できる意義は大きい。
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© 2013 日本理学療法士協会
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