理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-O-05
会議情報

一般口述発表
坂道昇降動作において、外側楔状板が膝関節に与える影響
宇都 由貴木山 良二前田 哲男米 和徳
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに、目的】変形性膝関節症(膝OA)は、移動能力に大きな影響を及ぼす疾患である。膝OAは膝関節外的内反モーメントの増大に伴う、荷重時の膝関節内側の圧縮ストレスが関与するとされる。外側楔状板(LW)の歩行時の力学的な効果として、踵骨の外反に伴う脛骨の垂直化、足圧中心点の外側変位による膝関節の外的内反モーメントの減少や荷重線の変位に伴う膝内側の負荷軽減などが報告されている。階段を坂道に変更することが多いが、傾斜角度が増加するにつれ、より高い剪断力や多くの推進力を生じさせる必要があり、疼痛が出現しやすいと報告されている。LWに関する研究は坂道歩行時に膝関節へ及ぼす影響についての報告は少なく、明らかにされていない。本研究の目的は、健常若年者を対象に、坂道の昇降動作において、LWが膝関節に与える生体力学的な影響を明確にすることである。【方法】対象は整形外科的、神経学的疾患の既往のない健常成人男性20 名とし、平均年齢は26 ± 5 歳、平均身長は172.7 ± 4.8cm、平均体重は68.6 ± 13.7kgであった (平均±標準偏差)。歩行の計測には、赤外線カメラ7 台で構成される三次元動作解析装置、床反力計を使用した。反射マーカーを両下肢12 箇所に貼付した。斜面は3mで、前後にそれぞれ平地3mを設置したものを用い、斜面の中央に床反力計を設置した。足底板は、平坦な足底板(Flat)と7 度の外側楔状板(LW)の2 種類とし、裸足に両面テープで固定し坂道歩行を行う。歩行条件は、0°、5°、10°の坂道昇降歩行10 条件を行わせた。得られた各身体部位の座標と床反力から関節角度、外的関節モーメント、足圧中心点を算出した。床反力と関節モーメントは体重で正規化した。外的膝関節内反モーメントは、2 峰性を示したため、立脚前期の0 〜50%、立脚後期の51 〜100%の極大値を比較し,足関節外反モーメントは外的膝関節内反モーメントの極大値と同時期の値を比較した。足圧中心点の外側移動量は踵骨からの距離として算出した。統計学的検定には斜面の角度と足底板を要因とした反復測定の2 元配置分散分析を用い、多重比較にはBonferroniの方法を用いた。統計学的有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】対象者には研究の趣旨と内容について文章と口頭にて説明を行い、書面にて同意を得た。本研究は、鹿児島大学医学部疫学・臨床研研究等に関する倫理委員会の審査を受けた研究である(第209 号)。【結果】歩行速度は傾斜角度による有意な影響が認められ、10°の坂道昇り歩行において遅かった。右膝関節外的内反モーメントは、前期ピークが後期ピークよりも大きい値を示した。立脚相前期と後期ピーク共に、足底板と傾斜角度による有意な影響が認められ、LWにて膝関節外的内反モーメントの減少が認められた。足関節外反モーメントでは、立脚前期ピークでは、足底板と傾斜角度で有意差が認められ、LWにて足関節外反モーメントの増加が認められた。後期ピークでは、傾斜角度で有意差が認められた。よって、立脚相前期ピークにおいて、LW装着にて足関節外反モーメントの増加が認められた。右膝関節内反角度は、有意な影響は認められなかった。足圧中心点の外側移動量は、立脚前期後期ピークに、足底板による有意な影響が認められ、LWにて足圧中心点が外側へ移動することが認められた。【考察】坂道歩行において、LWにて足圧中心点は外側移動し、膝関節内反モーメントは減少し、足関節外反モーメントは増加することが示された。LWにて、足圧中心点の外側移動により、前額面上の床反力と膝関節中心とのモーメントアームが小さくなったことで、膝関節外的内反モーメントが減少したと考えられる。足関節外反モーメントは、立脚相前期のピークで、遊脚期へと足圧中心点を足底内で踵から外側を通り母趾球方向に移動させる為、LWの効果を受けやすいと考えられる。LWの効果として、足圧中心点が移動し膝関節内反モーメント減少が生じる代償として、足関節に外反ストレスが生じることが示唆された。よって、坂道歩行においてもLWの有効性は認められたが、使用する場合には二次的障害予防として、足関節の外反ストレスを考慮する必要がある。【理学療法学研究としての意義】LWが坂道歩行時に膝関節への及ぼす影響についての報告は少なく、明らかにされていない。その効果を明確にすることは患者指導、装具適合性の観点から重要と考えられた。結果、LWの有効性は認められたが、二次的障害予防として、足関節の外反ストレスを考慮する必要が示唆された。
著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top