理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: D-P-11
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ポスター発表
感染により入退院を繰り返す若年者の重症気管支拡張症患者に対する理学療法の経験
田中 雄也新貝 和也井上 真実加藤 香織津田 徹
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抄録
【はじめに、目的】 気管支拡張症は気管支壁の破壊を伴う非可逆的な拡張状態を呈する病態であり、症状は慢性咳嗽と喀痰、血痰、喀血、呼吸困難などである。また貯留した喀痰は細菌の温床となり気道感染を悪化させる原因となるため、排痰を行うことが重要である。今回、感染により入退院を繰り返す若年者の重症気管支拡張症患者が気道内分泌物貯留による無気肺を呈した症例に対し、長期間の在宅生活を送ることを目的に理学療法介入したので報告する。【方法】 [症例紹介]21歳男性 身長:169cm 体重:45.5kg BMI15.9[診断名]#1慢性呼吸不全#2先天性気管支拡張症#3右下葉無気肺#4細菌性肺炎[既往歴]1歳:腸重積 19歳:イレウス(手術)[現病歴] 出生後まもなく気管支拡張症と診断され、7ヶ月で重症肺炎を発症し、人工呼吸器管理となった。3歳まで在宅酸素療法(以下HOT)を導入し、その後HOT中断となった。普通高校卒業後は仕事に従事していたが、肺炎により年に2回程度の入院加療を行っていた。平成24年2月に呼吸困難感が増強しHOT再開後S病院に入院し、肺炎治療と低酸素血症の精査、呼吸リハ目的に平成24年6月に当院転院となった。[経過]入院時の胸部X線写真で右下肺野に浸潤影を認めたが、発熱や炎症反応の上昇はなく胸部CTでは拡張した気管支内に大量の気道内分泌物が貯留しており右下葉無気肺の所見を認めた。主治医より低酸素血症の改善のため排痰を行うように指示があり、入院2日目より包括的呼吸リハビリテーションを開始した。運動療法と排痰に関しては、active cycle of breathing techniques(以下ACBT)と感染予防の指導、右後肺低区を中心としたSqueezing、筋力・持久力トレーニングを施行した。2週目の胸部X線写真の右下肺野に改善はみられず、頭低位を併用したSqueezingやリハ時以外にも体位ドレナージやACBTを行うことで排痰量増加を図った。また看護師と協力し畜痰や痰の状態の記録と自己管理のための教育をした。介入当初は無気肺の改善に難渋し、経過中2度肺炎を発症したが徐々に無気肺は改善し、改善後は肺炎の発症なく経過した。体重の増加がみられず管理栄養士と主治医と連携し、4週目に1800kcalから2000kcalに変更となり加えて栄養補助食品も開始となった。5週目にサービス担当者会議を行い、試験外泊時に肺炎再燃がなければ退院方向となった。退院にむけて排痰に関しては、PTは直接介入せずに患者の自己排痰のみに変更したが、喀痰量は目標量を到達できていた。外出時の酸素デバイスは酸素業者と連携をとり、キャリータイプからリュックタイプへ変更した。退院後はHOT日誌を利用した痰や身体状態の記録と感染予防、パルスオキシメーターを使用して自身にてモニタリングをしながら筋力・持久力トレーニングを行うように指導した。6週目に試験外泊後、7週目に自宅退院となった。【倫理的配慮、説明と同意】 本症例には、評価・測定の意義について説明し、学会で公表することを書面にて同意を得た。【結果】 介入開始時からADLは自立していたが自室で過ごすことが多く、スタッフや他患者とのコミュニケーションは必要最低限であった。退院前には自ら積極的にリハ室での運動やコミュニケーションを行っていた。安静時動脈血ガスはO23L/min鼻カニューレpH:7.346,PaO2:69.8mmHg,PaCO2:52.4mmHgから、O2 2L/min鼻カニューレpH:7.377,PaO2:70mmHg,PaCO2:51.5mmHgへ改善がみられた。胸部CTでは喀痰貯留による右下葉無気肺と周囲に浸潤影がみられていたが退院時には無気肺の改善を認めた。聴診より両肺野coarse crackle、右下葉にrhonchi、wheezeが聴取されていたが、退院時にはラ音は消失した。食事は全量摂取し、体重は45.5kgから45.8kgへBMIは15.9から16へと維持できていた。6分間歩行試験(3L/min 鼻カニューレ 独歩)では263mから397mへ延長した。NRADLは47点から66点へ改善し、SGRQは46点から23.9点へ改善した。退院後は、自家用車を運転し外来リハを継続している。【考察】 状態に応じた排痰手技に加え、喀痰量を自己管理することで気道浄化ができ右下葉無気肺、浸潤影の改善がみられたと思われる。また肺炎の発症予防や低酸素血症が改善したことで積極的な運動療法が可能となり運動耐容能や活動性が増したことでQOLの向上へつながったと考えられる。退院後も継続して排痰状況と栄養状態、感染徴候などを確認し、他部門と連携することで、長期間の在宅生活や就労支援をしていきたい。【理学療法学研究としての意義】 若年の重症気管支拡張症患者における理学療法を経験した。PTによる運動療法や排痰だけでなく患者自身がセルフマネジメント可能となるように教育し、自己管理能力を獲得することで自宅退院できることが重要だと思われる。
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© 2013 日本理学療法士協会
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