理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: B-P-17
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ポスター発表
下肢痙縮に対するボツリヌス治療・集中リハビリテーションが歩行能力に及ぼす影響
元田 奈々子峰岡 貴代美彌永 登美江磧 梨紗井上 勲
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抄録
【はじめに、目的】 当院では脳卒中片麻痺後の慢性期における下肢痙縮に対して、A型ボツリヌス毒素(BTX‐A)投与後、約2週間の入院で集中リハビリテーションを実施している。すでに歩行移動を獲得している患者の多くは更なる歩行能力の向上を希望される。先行研究によってBTX‐A投与後、歩行速度が向上したという報告はされているが、集中リハビリテーションを実施した症例の報告は少ない。当院での取り組みの中で得られた知見を報告する。【方法】 対象は2012年7月から2012年10月の間に、BTX‐A投与と約2週間の入院で集中リハビリテーションを行った患者10名のうち実用歩行レベルであった5名(男性4名、女性1名、年齢42~69歳)。発症後経過年数は4~24年。入院時の歩行補助は、背屈制動付プラスチック装具、シューホン型プラスチック装具、リストラップ、軟性サポーター、補助なしが各1名。治療対象の症候は内反尖足が3名、槌趾2名(重複あり)、足底のつっぱり1名。症候から投与筋を選択し、下腿三頭筋、後脛骨筋、長母趾屈筋、長趾屈筋にBTX‐Aを投与した。投与量は多いもので後脛骨筋に125単位、少ないもので長母趾屈筋、長趾屈筋に12.5単位であった。全例で上肢のBTX‐A投与を併用し、理学療法、作業療法合わせて1日6単位と自主トレーニングを実施した。理学療法プログラムは関節可動域練習、電気治療、筋力強化練習、荷重練習、神経筋促通運動、Gaitsolution Design(以下GSD)を使用した歩行練習、自主トレーニング指導などを実施した。BTX‐A投与前に初期、投与後2週間、6週間に理学療法評価を実施し、評価項目はModified Ashworth Scale(以下MAS)、関節可動域(以下ROM)、12段階片麻痺グレード、10m歩行、Time Up&Goテスト(以下TUG)などを実施した。また歩行の動画撮影を行い、動作分析を行った。退院時にはボツリヌス治療の満足度を確認した。5名中4名は2週間の入院後、週1回の外来リハビリテーションを継続している。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究にあたり、当院の倫理委員会の承認並びに、ご本人、ご家族の同意を得ている。【結果】 2週間後、5名中3名でMASの数値が減少したが、6週間後には3名とも初期評価時の数値に戻っていた。ROMでもほぼ同様の結果が得られた。12段階片麻痺グレードは変化がみられなかった。10m歩行では全例で2週間後に約7~23%、6週間後に約8~16%、所要時間が短縮し、歩数も減少した。TUGでもほぼ同様の結果が得られた。全例で共通してみられた初期評価時の歩行の特徴は、麻痺側のヒールコンタクトがなく、麻痺側立脚期の3つのロッカー機能がみられないこと、代償動作が出現することであった。2週間後、若干歩容改善した患者もいたが、異常歩行パターンは改善せず、6週間後も持続していた。退院時、2名がGSDを作製した。満足度は65~80%であった。集中リハビリテーション終了後、5名中4名は自主トレーニングの継続が可能であった。【考察】 本研究の結果、2週間後、6週間後で全例歩行速度が向上し、歩数も減少していることから、歩行の質が改善したといえ、BTX‐A投与と集中リハビリテーションの有効性が示された。しかし6週間後のMASでは効果が持続していない。異常歩行パターンにより再び痙縮を起こしていたと考えられ、長期的には、改善のあった歩行能力にも影響があると予測される。異常歩行パターン改善のため、麻痺側下肢への荷重を促した歩行練習やGSDを用いた歩行パターンの再学習を試みた。歩行練習中には若干の改善がみられる患者もいたが、実用歩行に反映されるには至らず、すでに学習している異常歩行パターンを改善し定着させることは困難であった。今後は歩行パターンの再学習に有効な理学療法の介入方法や自主トレーニング方法を検討し、確立させる必要がある。また、BTX‐A投与と集中リハビリテーションを行っても、慢性期での異常歩行パターンの改善が困難であるならば、急性期から異常歩行パターンを学習しない歩行練習が必要であるともいえる。痙縮を増強させる異常筋収縮を起こさない装具の選定も重要である。今後も経時的変化を追うとともに、下肢のみにBTX‐A投与を実施する例や反復投与例での効果も検証し、ボツリヌス治療の可能性と適応を検討していく。【理学療法学研究としての意義】 本研究では、BTX‐A投与と集中リハビリテーションが歩行能力向上に有効であると提示できた反面、歩容の改善については有効な結果が得られなかった。学習された異常歩行パターンへの理学療法の介入方法を検討していくとともに、急性期から痙縮を起こさないための介入方法の重要性が示唆された。
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© 2013 日本理学療法士協会
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