抄録
【はじめに、目的】 当院における短下肢装具(以下AFO)の選定方法として、装具回診の中で身体機能面や歩容、生活環境、装具の特徴等の様々な判断基準を用いて作製装具を選定している。ただし装具選定経験の少ないPTは多種のAFOの中から最適な装具を選定することに迷い、苦手意識を持つことが多い現状がある。そこでAFOを継手なし・継手付・semi AFOの3種類にわける判断基準を作ることでAFO選定の効率化と苦手意識の軽減を図ることができないかと考えた。そのため下肢支持性に着目し、河津(2011)や大竹(2005)が報告している支持性評価を参考に簡易的な静的・動的下肢支持性評価を考案した。AFO作製に至った患者にこの評価を用い、実際処方された装具と支持性評価を比較し、AFO選定の判断基準としての有用性を検討することを目的とした。【方法】 平成23年1月から平成24年10月までの期間に当院に入院した脳血管障害の患者で、歩行の獲得を目的に本人用装具作製した者45名(男性26名、女性19名、年齢64.0±13.3歳)を対象とした。装具作製者を、A)継手なしAFO(Rigid shoe-horn)13名、B)継手付AFO(Tamarack・PDC・GSD等)21名、C)semi AFO(Ortop・Dynamic等)11名の3群にわけた。静的・動的支持性評価は、臨床において簡便に実施ができる、評価1:麻痺側片脚立位保持、評価2:麻痺側片脚スクワット動作を使用した。評価方法は、評価1・2共に視線前方・裸足・肘屈曲30度での手すり把持・介助なしにて実施し、可・不可で評価した。評価1に関しては3秒間の保持を、評価2に関しては歩行中の膝の動きを想定して0~30°の範囲で膝屈伸動作を行わせた。評価1・2共に足底全面接地困難・介助を必要とすれば不可とした。評価は装具完成日に行った。解析はKruskal-Wallis検定を用いて評価1・2それぞれの結果と対象者3群に差があることを確認した後に多重比較検定のSteel-Dwass法を用いて比較・検討を行った。また同様の解析方法で評価1・2の総合結果と対象者3群との比較・検討も行った。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は主研究者が所属する施設の倫理委員会にて承認を得たものであり、ヘルシンキ宣言に沿った研究である。また患者家族に対し十分な説明を行い、同意を得たものである。【結果】評価1においては可(A群:8%、B群:81%、C群:100%)、評価2においては可(A群:0%、B群:19%、C群:82%)であった。これらと対象者3群との多重比較検定では、評価1では可が多かったB群・C群と不可が多かったA群それぞれに有意差を認め(p<0.01)、B群とC群との間には有意差を認めなかった。評価2では可が多かったC群と不可が多かったA群・B群それぞれに有意差を認め(p<0.01)、A群とB群との間には有意差を認めなかった。次に評価1・2の総合結果は、評価1・2共に不可(A群:92%、B群:24%、C群:0%)、評価1可・評価2不可(A群:8%、B群:57%、C群:18%)、評価1不可・評価2可(A群・B群・C群:0%)、評価1・2共に可(A群:0%、B群:19%、C群:82%)、となった。これらと対象者3群との多重比較検定では、評価1・2共に不可ではA群とB群、A群とC群に有意差を認め(p<0.01)、B群とC群には有意差を認めなかった。評価1可・評価2不可ではA群とB群に有意差を認めたが(p<0.05)、A群とC群、B群とC群に有意差を認めなかった。評価1・2共に可ではA群とC群、B群とC群に有意差を認め(p<0.01)、A群とB群に有意差を認めなかった。【考察】結果より、評価1・2が不可であれば継手なしAFO、評価1・2共に可であればsemi AFOと選定できることが推察された。これを合致率で示すと、継手なしAFOは92%、semi AFOは82%と高値であった。しかし、継手付AFOに関しては結果より、A群とは有意差を認めたがC群とは有意差を認めていないため、評価1可・評価2不可であれば継手付AFOという選定の流れを推察することができず、合致率も57%と低値であった。立脚相で考えると、静的・動的支持性低下に対しては、足・膝関節のコントロールを装具の支持で代償する固定性の高いAFOが、検査上支持性に問題がなければ足関節のコントロールを補助する固定性の低いAFOが適応になるのではないかと考えた。しかし、動的支持性低下に対しては、装具の回転軸が足関節にあり可動範囲や制動力の調整にて足・膝関節のコントロールを補助するAFOが適応になるという予測をたてていたが、結果が得られなかったため、今後はデータ数を増やすと共に別評価も再検討していく必要があると考える。【理学療法学研究としての意義】 継手なしAFOとsemi AFO選定に関しての判断基準として簡易的な静的・動的下肢支持性評価は有用である可能性が示唆されたという点で意義があると考える。