理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: C-P-37
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ポスター発表
全人工膝関節置換術(TKA)前後における昇段動作時の最大体幹前傾角の経時的変化
堀内 秀人山中 正紀小林 巧井上 雅之
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キーワード: 体幹前傾角, 昇段動作, TKA
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抄録
【目的】体幹は身体の中で最も大きな体節であり、立ち上がり動作や階段昇降動作における重心位置に影響を及ぼす。Katiaらは、Sit-To-Stand(STS)中において重度膝OA患者の体幹前傾角が健常者と比較し有意に増加していることを明らかにした。またJessicaらは、健常群と比較し重度膝OA患者の昇段動作時の体幹前傾が増加することを報告しており、昇段動作時の体幹前傾角の評価は、主観的疼痛評価よりも膝関節の重症度を示すと述べている。また、この体幹前傾増加はTKA術後も認められると考察しており、我々は、第45回日本理学療法士学術大会において早期TKA術後患者の昇段動作時の体幹前傾増加を報告した(2010年)。しかしながら、TKA術前後の昇段動作時の体幹前傾角を経時的に検討した報告はない。そこで我々は、TKA前後の昇段動作時の最大体幹前傾角を計測し、術前体幹前傾角と術後体幹前傾角の経時的変化について調査した。本研究の目的は、TKA術前とTKA術後4週、6ヶ月における昇段動作時の体幹前傾角を比較・検討することである。【方法】対象者は、当院でTKAを施行する患者10名(男性1名、女性9名:平均年齢73.5±3.9歳、平均身長152.4±5.7cm、平均体重60.3±8.1kg、北大分類:Ⅳ7名、Ⅲ3名)とした。術前および術後4週目、6ヶ月目に段差15cmの踏み台を術側より上肢支持なしで昇段した。この昇段動作は3回繰り返され、昇段中の最大体幹前傾角とその時の膝屈曲角の3回の平均値を用い検討した。撮影は、60Hzデジタルカメラを用い、動作解析にはDARTFISH4.5(ダートフィッシュ・ジャパン社製)を用いて矢状面上の角度変化を計測した。踏み台から3.6m側方にカメラを設置し、カメラは被験者の腸骨稜の高さに一致させた。肩峰、ASIS、PSIS、大転子、膝中心、外果に直径10mmの反射マーカーを貼付した。体幹前傾角は、肩峰からPSISを結んだ線とPSISからASISを結んだ線とのなす角を90°から引いた角度、膝屈曲角は大転子から膝中心を結んだ線と膝中心から外果を結んだ線とのなす角とした。昇段動作中の疼痛の指標としてVisual Analogue Scale(VAS)を用いた。VASは、昇段動作における自覚的疼痛を10cmの直線上に示してもらい、検者により計測しmm単位で記録した。0は無痛、100は耐えられない疼痛とした。データ解析は、体幹前傾角、膝屈曲角、VASにおける各時期の比較に一元配置分散分析後、多重比較検定(FisherのLSD検定)を行った。有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究における被験者に対し、口頭で研究趣旨、研究内容を説明し、研究結果の使用を了承・同意の上、計測を行った。【結果】最大体幹前傾角は、術前21.2±6.0°、術後4週27.4±6.0°、術後6ヶ月20.8±4.4°で、術後4週は、術前と術後6ヶ月と比較し有意に前傾していた。膝屈曲角は全ての時期の間に有意な差を認めなかった。VASは、術前39.4±34.9mm、術後4週28.5±16.3mm、術後6ヶ月8.4±22.4mmで、術前と術後6ヶ月に有意な差を認めた(p<0.05)。【考察】本研究の結果より、TKA術前後における昇段動作時の膝関節屈曲角に変化がなく、最大体幹前傾角が術後4週で有意に増加し6ヶ月で術前同様まで減少した。Katiaらは弱化した大腿四頭筋の代償として体幹前傾が増加すると述べており、術後早期において大腿四頭筋収縮低下を代償し、体幹前傾が増加している可能性を示唆した。また、VASが術前と比較し術後6ヶ月で有意に低下しているにもかかわらず体幹前傾角に有意な差がみられないことから、昇段動作時における体幹前傾角に疼痛は関与しないことが示唆された。Shraderらは、膝OA患者の除痛は歩行機能を高めるが、昇降機能を十分には高めないことを示し、今回の結果はこれを一部支持するものとなった。本研究の限界は、疼痛以外の項目を評価しておらず、大腿四頭筋の筋力やSTS、Stair Climbing Testなどの機能評価と体幹前傾角との関連を検討する必要があると考えている。【理学療法学研究としての意義】TKA術前後の昇段動作時における膝屈曲角に変化がなく、体幹前傾角が経時的に変化したことにより、今後、その要因の調査が必要であるが、TKA術後の膝関節機能変化の調査に体幹前傾が考察の一助となると思われる。今回用いたDARTFISHを用いた体幹前傾角測定は、経済的、時間的コストの観点から、臨床において有用である。
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© 2013 日本理学療法士協会
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