理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: E-P-02
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ポスター発表
訪問理学療法対象者のバランス能力と安全な生活空間についての検討
小堺 武士田中 渉山崎 雅也
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キーワード: LSA, BBS, 転倒
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抄録
【はじめに、目的】高齢化が進む現代において、理学療法士の居宅への訪問ニーズは大きくなってきている。現在、理学療法士が理学療法対象者の居宅へ訪問するには訪問リハビリテーションと訪問看護という2つの方法があるが、いずれにせよ訪問で接する対象者の生活空間はそれほど広くないことが多く、外出が困難であるケースによく遭遇する。このような訪問理学療法の対象者に外出の契機を与えることは非常に重要なことであるが、同時に転倒のリスクを大きくする可能性が潜んでいると考えられる。今回はバランス能力の違いに着目し生活空間の広がりと転倒に関連があるかどうかを検討したのでここに報告する。【方法】平成24年10月現在で当ステーションからの理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の訪問サービスを利用している高齢者のうち、屋内での歩行を自力で行っている56名(男性31名、女性25名、平均73.6±11.0歳)を対象とした。対象者にはBerg Balance Scale(以下BBS)、Life space assessment(以下LSA)、Functional independence measure運動項目(以下FIM)の測定と過去1年間の転倒経験の有無を聴取した。臨床的なバランスや移動能力のカットオフ値とされるBBS45点以上をバランス良好群(16名)、45点未満をバランス不良群(40名)とし、FIM得点、LSA得点との比較(マン・ホイットニーのU検定)と転倒経験の有無との比較(χ2乗検定)を行った。危険率は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】対象者には。研究説明書を用いて研究手順や個人情報の保護等について説明を行い,同意書の署名をもって研究参加の承諾とした。【結果】2群全体での得点はBBS39.2±10.1、LSA32.9±16.7、FIM79.1±7.3、転倒経験あり25名、転倒経験なし31名であった(転倒率44.6%)。バランス良好群の得点はBBS49.4±3.5、LSA42.2±20.7、FIM84.1±5.1、転倒経験あり5名、転倒経験なし11名であり、バランス不良群の得点はBBS35.1±9.0、LSA29.1±13.4、FIM77.2±7.2、転倒経験あり20名、転倒経験なし20名であった。統計学的分析では2群間のBBS得点、LSA得点、FIM得点に有意差が認められたが、転倒の有無について有意差は認められなかった。【考察】LSAは個人の生活の空間的な広がりにおける移動を評価する指標であり、(公社)日本理学療法士協会が、厚生労働省から平成17年度~19年度に「老人保健事業推進等補助金事業」の4交付を受けて開発したアセスメントセットE-SASにも組み込まれている評価法である。生活の広がりを0~120点で数値化し、56点がカットオフ値とされている。今回の調査では対象者全体のLSA得点は32.9±16.7であり、総じて生活空間は狭いといえる。今回の結果より、BBS得点が高いほうが生活空間は広いということが示唆された一方、BBS得点だけでは今回の対象者の転倒の有無を判断できないことが示唆された。在宅生活においては身体的なバランス能力だけでなくその他の個人因子や環境因子などが包括的に関与しているものと考えられる。【理学療法学研究としての意義】訪問理学療法対象者に対してLSAを使った報告はまだまだ少なく、バランス能力との関連を検討した本研究は、今後の訪問理学療法対象者の安全かつ最大の生活空間について研究を行う上で意義のあるものである。
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© 2013 日本理学療法士協会
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