理学療法学Supplement
Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: A-P-21
会議情報

ポスター発表
最大筋収縮イメージによる神経活動の変化は運動イメージ能力の評価法になりうるか?
門馬 博八並 光信
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに】運動イメージは,一切の運動出力なしにワーキングメモリー内において運動を内的にリハーサルする状態と定義される(Decety, 1999).運動イメージ想起中の神経活動について,経頭蓋磁気刺激(TMS)を用いた運動誘発電位の振幅が増大することは広く知られている(Kasai, 1997).一方で,運動イメージによる神経活動の変化は,健常者でも個人差が認められることが近年報告されている(Guillot, 2008).運動イメージ能力は,スポーツやリハビリテーションにおけるメンタルプラクティスにも大きく関わる要因であるため,現在,様々な評価法が検討されている(Ietswaart, 2011).その中の一つの手法として,Williamsら(2012)は,最大筋収縮(MVC)イメージ想起中の運動誘発電位を指標とした研究を報告している.しかし,実際の運動は,複数の筋が協調しながら行われるため,単純な筋収縮のイメージで運動イメージ能力を評価する妥当性には検討の余地があると考える.そこで,本研究は,MVCイメージと反復運動イメージ想起中の運動誘発電位を計測し,運動イメージ能力の評価法の開発を目的とした.【方法】対象は神経系に特別な既往のない健常者10 名(男性5 名,女性5 名,平均年齢27 歳)で,全員右利きであった.運動誘発電位の計測には経頭蓋磁気刺激装置(Magstim200 スクエア,Magstim Co. Ltd., UK)を用い,実験中の刺激強度は安静時閾値の1.2 倍として,非利き手の短母趾外転筋より導出した.運動イメージ課題は,母指外転最大筋収縮イメージ,および1Hzのメトロノームに合わせた母指の内外転反復運動イメージとした.内外転反復運動イメージにおいては外転相(on-phase)と内転相(off-phase)の運動誘発電位をそれぞれ記録した.導出した運動誘発電位の振幅値はNielsen(1996)の方法に則り自然対数(Ln)に変換して標準化を行った.安静時,MVCイメージ想起時,反復運動イメージのon-phase,off phase振幅値についてフリードマン検定,および多重比較としてSheffeの検定を用いて比較した.また,MVCイメージの安静時に対する比(%control値)と,反復運動イメージのon-phase,off-phaseの差(delta phase)についてスピアマンの順位相関係数を算出した.【倫理的配慮・説明と同意】本研究は,所属機関の倫理審査委員会の承認を受けて行われた.被験者には,書面を用いて実験の概要を説明し,ペースメーカーの使用など経頭蓋磁気刺激の禁忌事項に該当しないことを入念に確認した上で,署名をもって同意を得た.【結果】安静時,MVCイメージ想起時,反復運動イメージのon-phase,off-phaseの運動誘発電位振幅の平均値(Ln)はそれぞれ5.89 ± 0.71,6.63 ± 1.14,6.48 ± 1.16,6.02 ± 1.00 であった.多重比較より,安静時とMVCイメージ間,MVCイメージとoff-phase間で有意差が認められた(p<0.05).また,MVCイメージの%control値とdelta phaseにはr=0.69 の優位な相関関係を認めた(p<0.05).【考察】運動は,時間の正確性(タイミング),空間の正確性(スペーシング),出力の正確性(グレーディング)が要因として挙げられる(Guthrie, 1952).運動イメージの評価においても,これらを考慮する必要があると考え,MVCイメージと反復運動イメージにおける運動誘発電位の振幅値を検討した. MVCイメージの%control値とdelta phaseに相関関係がみられたことから,MVCで運動誘発電位の振幅が増大する者は,反復運動イメージにおいてon-phaseとoff-phaseをより区分することが可能であることが考えられる.on-phaseとoff-phaseが区分できるということは,イメージにおいて運動を良好にコントロールできていることが考えられる.よって,MVCイメージの%control値,および反復運動イメージのdelta phaseは共に運動イメージ能力の指標として有用である可能性が示唆された.【理学療法学研究としての意義】理学療法において,運動イメージを用いたメンタルプラクティスに関する報告が多くみられるが,治療の導入基準(クライテリア)が明確でなく,運動イメージ能力の評価法の確立が求められている.本研究は経頭蓋磁気刺激を用いた手法を検討し,評価法としての可能性が示唆され理学療法研究としての意義をもつと考える.今後は臨床で用いられている質問紙法や心的時間測定法など,他のモダリティとの関連性について検討する予定である.
著者関連情報
© 2013 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top