抄録
近年のサルの電気生理学的研究やヒトの脳イメージング研究は,仮現運動知覚における複数の脳領域の寄与を示唆してきた。特に側頭頭頂後頭接合部 (temporo-parieto-occipital junction: TPOJ) に関する知見が,ここ数年いくつか報告されている。しかし,これらの研究で報告されている個々の領域が,どのように仮現運動知覚に関わっているのかは明らかではない。そこで,本研究では,オフラインの反復経頭蓋磁気刺激 (repetitive transcranial magnetic stimulation: rTMS) によって,複数の側頭頭頂接合部の神経活動を一時的かつ部位限局的に抑制することにより,それぞれの領域が仮現運動知覚にどのような機能的関与を行っているかを直接に検討した。その結果,rTMS適用後の仮現運動知覚の様態が部位依存に変化している可能性が示されたので,その一部を報告する。