人物の印象など、他者の属性についてわれわれが持っている表象は、しばしば具体的な行動をもとにした推論によって形成される。その代表例が、行動から性格などの特性が推論される「自発的特性推論」の過程である。本研究の目的は、特性だけでなく所属集団などの社会的なカテゴリーや役割についても自発的推論が喚起されることを示すことである。所属カテゴリーを暗示する多数の行動記述文を大学生に呈示した後、手がかり再生を求めた。結果は、手がかり語として社会的カテゴリー名を呈示した条件では、刺激文中に含まれた語と強く連合した語を呈示する条件や手がかり語のない条件よりも再生成績が優れることを示した。符号化特殊性の観点から、自発的推論過程とエピソード記憶との関連、および人物表象の内容との関連について議論する。