抄録
本研究の目的は母語と第二言語の言語性作動記憶を測定するためのリーディングスパンテストを開発することである。作動記憶容量が読解の強力な説明変数であることが明らかになっているにも関わらず,第二言語読解研究においてリーディングスパンテストが実施されることは極めて少ない。リーディングスパンテストは個別に実施されるものであるため,英語習熟途上の中学生,高校生の所属する教育現場において大幅な実験時間を割くことが不可能に近いからである。本研究では,刺激文とターゲット語を言語面から統制した高校生用リーディングスパンテストの日本語版と英語版を作成し,CALLを使った集団式テスト方法を考案した。50分間3コマの授業で高校2年生120名に日本語版と英語版のテストに参加してもらったところ,テストの信頼性は英語版,日本語版ともα係数0.8以上となり,総再生数,正再生率,記憶個体数,総正答セット数の得点分布に正規分布が確認された。