抄録
人が新奇な人工物を利用する際,何をどのように学習しているのか明らかにするため,Groton Maze Learning Test (GMLT)を用いて実験を行い,特に課題に埋め込まれた手がかりの意味獲得の効果について検討した.本研究では特に問題解決の結果生じる学習に注目し,本試行後に経路の全体像の偶発的な再生課題を実施した.若年成人・高齢者とも24名の参加者が半数ずつ手がかりあり/なし群に割当てられた.経路偶発再生課題について再生エラー率を算出したところ,若年成人では手がかり有無の効果がみられなかったが,高齢者では手がかりにより若年成人と同レベルまで再生エラー率が低下し,意味検出が容易な手がかりの提示が年齢差を消失しうることを示した.今後,こうした問題解決・学習上の手がかりの効果が得られる過程・メカニズムを明らかにしていくことが必要と考えられる.