抄録
Fading Affect Bias(FAB)とは,情動的にネガティブな出来事と結びついた感情は,情動的にポジティブな出来事と結びついた感情よりも早く弱まる傾向があるバイアスのことである.しかし,このFAB効果の大きさと気分の個人差との関係は明らかではない.本研究では,日記法を用いてFAB現象と気分の個人差の関係を検証した.参加者は,情動的にPositive,Neutral,Negativeな出来事を毎日1つずつ14日間連続で日記に記入し,各出来事についての覚醒度を評価した.さらに14日後に,参加者は日記に記載した出来事についての覚醒度を再評価し,さらに気分と性格特性に関連する心理検査を施行した.その結果,FAB現象の大きさは,記憶想起時のネガティブな気分状態が強い個人ほど有意に減少することが示された.この結果は,FAB現象は記憶想起時の気分の個人差によって予測されることを示唆している.