抄録
他者の存在が認知情報処理に与える効果について検討を行った.認知課題として変化の見落とし課題を実験参加者に課し,参加者と面識のない女性1名が実験ブース内で参加者の斜め後ろに立ち,その課題遂行の様子を観察する他者観察条件と,実験者が実験ブース外で待機し,参加者のみで課題を遂行させる観察なし条件を設定した.参加者には変化箇所の正解を見つけるまで探し続けることを求め,各試行の変化検出までにかかった時間を測定した.その結果,他者観察条件では観察なし条件よりも,見落とし課題の変化検出時間が有意に長くなった.他者に課題遂行を見られている場合,そうでない場合と比べ不安や緊張が増大することで認知処理が機能しにくくなる,もしくは他者に過分な注意が向いてしまうことにより認知課題を遂行するために必要な注意資源が少なくなるなどの理由により,課題成績が悪化した可能性が考えられる.