抄録
言語隠蔽効果の原因として有力な説が転移不適切処理シフト説である。実際,Macrae & Lewis,(2002)の顔再認の実験で言語化の代わりにNavon文字を用いた結果,再認課題に適した形態的(全体的)処理を誘導するGlobal処理群はControl群より後の再認成績が向上し,言語化同様に特徴的(分析的)処理を誘導するLocal処理群はControl群より再認成績が低下すると示されている。嗅覚刺激でも言語隠蔽効果が実証されているため(村島・箱田・松浦, 2015),これも転移不適切処理シフト説で説明できると期待される。実験はNavon課題の処理時間を3分・5分・10分と設定し,それぞれでNavon文字の処理モード間に再認成績の差が見られるか検証した。その結果,処理時間が3分と5分の場合のみ,処理条件間に有意な差が見られ, Global処理群がLocal処理群とControl群より成績が向上した。