抄録
本研究は,視覚認知特性の個人差を反映した運転支援システムの実現を目指し,視覚的な物体認識の判断スタイルにおける個人差を検討することを目的とした。これまで視覚刺激のサイズを判断する際,西洋人は対象物体に焦点をあてた絶対的な判断を行う傾向があり,東洋人は対象物体と周辺領域の双方の情報を用いた相対的な判断を行う傾向にあることがフレームラインテスト等によって示されている.しかし,絶対・相対判断傾向の個人差は文化にのみ依存するのではなく,同じ東洋人であっても絶対判断傾向を有する人も存在すると考えられる。そこで,運転免許を有する47人を対象に,絶対・相対判断傾向の個人差と模擬運転中の視線行動の関係を調べた.視線行動を分析した結果,絶対判断傾向群は進行方向を注視し,相対判断傾向群は進行方向以外の情報を観察することが示され,視覚認知特性に応じた運転支援システムの必要性が示唆された.