抄録
言語と図の両方で情報が提示されるマルチメディア学習において,教材内の重要情報に学習者の注意を誘導するキューは,内容理解を促す手段の一つとされている(Mayer, 2014).本研究では,マルチメディア教材の内容理解に,色づけという注意誘導キューの挿入と学習者のワーキングメモリ(WM)の容量が及ぼす影響を検証した.実験では,自動化オペレーションスパン・テストにより被験者をWM容量高群と低群に分け,ナレーションとイラストからなる教材を,注意誘導キューあり(色あり)・誘導キューなし(色なし)のいずれかの条件で視聴させた.視聴後に実施した理解度テストの結果では,WM容量高群の得点がWM低群の得点よりも有意に高かった.これは,WM容量の高い学習者が注意をコントロールする能力に優れ(Engle, 2002),注意誘導キューの有無に関わらず,重要情報を効率的に処理していることを示唆している.