抄録
人が自分の名前を好み,注意を向ける傾向があるということは明らかになっている。しかし,ある対象から名前を呼ばれることによって,その対象の印象が変化するかどうかについては十分に検討されていない。そこで本研究では,同性あるいは異性から名前を呼ばれることによって生じる,名前を呼んだ者に対する評価の変化を検討した。参加者の性別,刺激の性別,名前の呼びかけの有無を独立変数とし,刺激に対する評価得点を従属変数とする要因計画を用いた。128名の実験参加者に名前を呼びかける/呼びかけないゲームを行い,ゲーム前後での印象の変化を検討した。その結果,名前の呼びかけ要因の主効果は見られなかった。しかし,女性参加者においては,同性には呼ばれない方が,異性には呼ばれる方が好印象であるという交互作用が見られた。本研究の結果から,呼びかけられる相手の性別によって名前の呼びかけの影響は変化することが示唆された。