オレオサイエンス
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特集総説論文
膜タンパク質研究への展開をめざした部分フッ素化リン脂質膜の開発
園山 正史
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2016 年 16 巻 3 号 p. 137-143

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抄録

私たちは,膜タンパク質の構造・機能解析に用いる新しい化合物として,アシル鎖末端にパーフルオロアルキル(Rf,CnF2n+1)基を含む部分フッ素化リン脂質を開発している。Dimyristoylphosphatidylcholine(DMPC)の部分フッ素化アナログ分子として,種々の長さのRf基をアシル鎖末端に含む新規リン脂質群Fn-DMPC(n=2,4,6,8)を合成し,脂質膜のゲル-液晶相転移温度を調べたところ,Rf鎖長に顕著に依存した挙動が観測された。DMPCに比べて,nが6より小さい場合は相転移温度が低下する 一方,n=8にRf 基を伸長すると相転移温度が50℃以上も劇的に上昇した。膜タンパク質バクテリオロドプシン(bR)をF4-DMPCリポソームに組み込んだ再構成膜では,DMPCの場合と異なり,ゲル相,液晶相のいずれにおいても,bRは天然紫膜類似の高次構造と機能サイクルを有することが示された。このことは,部分フッ素化リン脂質が膜タンパク質研究に有用であることを示していると考えられる。

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© 2016 公益社団法人 日本油化学会
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