抄録
咀嚼・嚥下困難者の食事におけるQOL向上を目的に,においに特徴のある食材わさびと煮干しを用いて,キサンタンガム系と寒天系のとろみ調整剤を加えた際の香気フレーバーリリースを追跡した。におい識別装置と官能評価の二つの方法でにおいを定性分析した。さらにGC/MSにて,わさびの主要香気成分アリルイソチオシアネート(AITC)の定量分析を行った。その結果,とろみ調整剤を加えると,食品全体のにおいは弱まり,においの質の変化はわさびを加えた試料で大きく,AITCの量は有意に減少した。逆に,咀嚼を想定した圧縮応力を加えると,食品全体のにおいは強まり,AITCの量は増加傾向を示した。そのため,とろみ調整剤添加により食品内部に保持されていたにおいは,咀嚼により再び放散されることが推察される。