日本調理科学会誌
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ニンジンピューレの粒子に関連する口中感覚の評価
中野 優子早川 文代香西 みどり
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2020 年 53 巻 3 号 p. 177-186

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抄録

 破砕の程度を5段階に変化させたニンジンピューレを用い,ピューレの呈する口中感覚を機器測定および官能評価によって評価するとともに,個人の嗜好傾向が官能評価に与える影響を検討した。破砕の程度の異なるピューレでは,粒子のサイズだけでなく粒子の形や物性も異なっており,機器測定による水平方向の抵抗力はピューレ中に含まれる粒子の不均一さや試料の流動しやすさの違いを反映した。官能評価の結果,パネル全体の平均値では,破砕が進むほど甘味,なめらかさの評点は増加し,粒子感の強度は弱まったが,粒子感の好ましさや総合的な好ましさには一定の傾向がみられなかった。次に,各ピューレに対する粒子感の強度と好ましさの評点をパネリストごとにプロットし,個人の嗜好傾向の解析を試みたところ,パネルはなめらかさを好む者,粒子感を好む者,その他に分類された。嗜好傾向の類似したパネリスト群ごとに各試料の評点を求めた結果,なめらかさや粒子感の強度の評価に嗜好傾向の違いは影響しなかった。これに対して試料間の好ましさはパネリスト群ごとに見れば有意に異なっており,個人の嗜好傾向を考慮して試料の受容性を解析する手法の有用性が示唆された。

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© 2020 一般社団法人日本調理科学会
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