2024 年 77 巻 5 号 p. 333-338
インクレチンは摂食時に分泌されインスリン分泌促進作用を持つ腸管ホルモンであり, 主にGIP (glucose-dependent insulinotropic polypeptide/gastric inhibitory polypeptide) とGLP-1 (glucagon-like peptide-1) からなる。インクレチンは摂取する栄養素の順番や食事のタイミング, 咀嚼とも関係しており, インクレチンの分泌を促す食事療法が血糖管理の一助となる可能性が考えられる。また, インクレチン関連薬は血糖依存性のインスリン分泌促進とグルカゴンの分泌抑制により血糖上昇を抑制し, 単独投与では低血糖の危険性が低く体重増加も来しにくい。インクレチン関連薬にはDPP-4阻害薬, GLP-1受容体作動薬, GIP/GLP-1受容体作動薬があり, 特にGLP-1受容体作動薬はGLP-1の膵外作用による食欲抑制や心血管イベント・糖尿病性腎症の発症・進展抑制効果を認める。一部のインクレチン関連薬は服用する際の注意点があるほか, インクレチン関連薬を使用する際の食事への介入の重要性について本稿で概説する。