日本調理科学会誌
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55 巻, 1 号
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報文
  • 柳原 尚之, 前橋 健二, 阿久澤 さゆり, 穂坂 賢, 藤井 暁, 長野 正信, 小泉 幸道
    原稿種別: 報文
    2022 年 55 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2022/02/05
    公開日: 2022/02/08
    ジャーナル フリー

     江戸期及びそれ以前の書物に記載されている酢製造法を調査し,16冊の書物から33件の米酢製造法を抽出した。江戸期の米酢製造法では,現代と比べて汲水歩合が著しく低く,仕込み時期は夏が多く,仕込み期間は1週間から1カ月程度と短いものが多いという特徴がみられた。江戸期書物記載の方法による再現仕込み試験は,江戸期から伝統的製法で壺酢製造を続けている酢製造会社にて行われた。その結果,汲水歩合が現代と同様およそ300%の仕込みでは30日目以降に酢酸発酵を認められたが,汲水歩合がおよそ100~250%の仕込みにおいては,仕込初期に乳酸発酵で 1~2 g/100 mlの乳酸が生成され,9~13 g/100 mlという高いエタノール濃度となって酢酸発酵へは移行しなかった。江戸期には,乳酸を酸味の主体とする発酵物が酢として作られていた可能性が示唆された。

ノート
  • 石橋 ちなみ, 松本 茜, 戸松 美紀子, 鈴木 麻希, 杉山 寿美
    原稿種別: ノート
    2022 年 55 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2022/02/05
    公開日: 2022/02/08
    ジャーナル フリー

     本研究では,比較的低濃度の食塩が添加されるひき肉料理の食塩添加量減少の影響を明らかにすることを目的として,0.5~1.0%の食塩を添加した牛すね肉パティの破断特性,官能特性とレオロジー特性を検討した。走査電子顕微鏡観察では,食塩1.0%の牛肉パティはなめらかな構造であり,官能評価においても食塩0.5%よりも食塩1.0%の牛肉パティが好ましいテクスチャーと評価された。動的粘弾性測定では,食塩添加はG’,G’’の上昇開始温度を低下させた。一方,周波数依存性は30℃および40℃の低周波数域を除き,食塩添加の有無および添加量に関わらず,いずれの温度でも一致しており,溶出したミオシンが筋原線維の小片等と形成する牛肉パティの内部構造に加熱前後で大きな変化がないことが確認された。以上より,食塩添加の有無および添加量による牛肉パティの性状の差は,レオロジー特性から推察される内部構造においては極めて小さな違いの中で決定づけられると考えられた。

  • 宮部 好克, 落合 瞳子, 熊谷 祐也, 岸村 栄毅
    原稿種別: ノート
    2022 年 55 巻 1 号 p. 19-29
    発行日: 2022/02/05
    公開日: 2022/02/08
    ジャーナル フリー

     青森県では近年のスルメイカの不漁を受け,マサバおよびアイナメの缶詰ならびにマイワシのレトルト食品の開発に取り組んでいる。そこで,本研究では缶詰(マサバ,アイナメ)およびレトルト食品(マイワシ)の製造工程において種々の要因が ω3脂肪酸(EPA,DHA)の残存率に及ぼす影響を,直交表を用いた実験計画による分散分析法により解析した。実験計画ではそれぞれ4項目(缶詰:魚種,加熱温度,加熱時間,調味液;レトルト食品:容器,調味液,保存期間,加熱温度)を直交表の要因として設定した。その結果,缶詰では重量変化率が魚種,脂質残存率が魚種と調味液,EPA残存率およびDHA残存率が魚種と加熱時間に影響を受けた。一方,レトルト食品では重量変化率が容器,EPA残存率が調味液に影響を受けた。以上より,水産加工食品の製造工程において可食部に ω3脂肪酸を保持するには,缶詰では魚種および加熱時間,レトルト食品では調味液が重要な制御要因であることが明らかになった。

資料
  • 山澤 和子, 堀野 恵美, 三浦 紗瑛, 水谷 友香, 山河 真里奈
    原稿種別: 資料
    2022 年 55 巻 1 号 p. 30-39
    発行日: 2022/02/05
    公開日: 2022/02/08
    ジャーナル フリー

     煎茶葉4点を用いて淹れた3煎目までの煎出液について,呈味成分の定量と女子学生を被験者とした呈味嗜好性の調査を行った。その結果,煎茶葉および煎出回数の違いによって各煎出液中のタンニン,カフェイン,グルタミン酸等の呈味成分量は大きな違いがあった。被験者の煎茶煎出液の呈味嗜好性は,煎出液中の苦渋味に関与するタンニンとカフェイン,およびうま味に関与するグルタミン酸の量が中程度および構成比が概ね4:1となる場合で高いことが明らかとなった。また,日常の緑茶摂取頻度および家族の緑茶飲用状況が高い被験者では,緑茶のうま味や美味しさの嗜好性が高かったことから,緑茶葉を用いて淹れた緑茶を飲用できる環境が整う事で若い世代の人々に緑茶飲用を継承できていくと推察した。

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