2023 年 56 巻 6 号 p. 246-255
ヒトツブ小麦粉を用いて食パンを調製し,その性状と嗜好性を検討した。対照は,普通小麦粉,スペルト小麦粉とした。ヒトツブ小麦粉を用いた焼成パンは赤褐色で,普通小麦粉,スペルト小麦粉と比較し膨化性が低く,老化速度はゆるやかであった。分析型官能評価では,普通小麦パンと比較して,硬く,小麦の香りが強いと評価された。嗜好型官能評価では,内相の色,小麦の香り,パンの硬さ,しっとり感において,普通小麦パンと同様に好ましいと評価されたが,外皮の色,弾力性,総合評価では有意に低かった。ヒトツブ小麦を用いた食パンの嗜好性を向上させるためには,物性の改善が必要であるが,栄養的な付加価値を有するパンとして期待ができるものと考える。