カウンセリング研究
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ケース報告
自傷行為を繰り返す青年期の大うつ病性障害に対する認知行動療法
松田 英子木村 富美子
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2014 年 47 巻 4 号 p. 232-239

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抄録

本事例のクライエント(17歳女子)は,対人スキルの乏しさから,小学校高学年より他者との間にコミュニケーション不全が生じた結果,強い不安や自己嫌悪の念に苛まれ,薬の大量服用を繰り返すなどの自傷行為を伴う重度の気分障害を発症していた。さらに過換気症候群や不眠も併発するなど,早急な精神医学的治療が望まれた。十分な信頼関係,協働的治療関係を築いた後,各症状に対する心理教育を行い,身体症状の安定化を図るためにブリーフ・リラクセーション法を導入し,次に否定的自動思考と衝動的な不適応行動の制御に焦点にあてた認知療法を,さらに対人スキルの形成から適応的対処行動が可能になった結果,自傷行為と過喚起症候群不眠は消失し,抑うつと不安,自責感の症状の軽減が得られ,薬物療法なしでも症状の安定が維持された。この経過をふまえ,自傷行為を伴う青年期のうつ病においては対人スキルの向上が重要であること,認知行動療法の各種技法の適用により短期間で症状の軽減が認められることを確認した

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© 2014 日本カウンセリング学会
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