2019 年 31 巻 2 号 p. 169-177
関節リウマチ(RA)は,関節の滑膜病変や骨破壊による関節破壊を主体とする炎症性自己免疫疾患である.関節病変部位では,滑膜線維芽細胞の著しい増殖と,多数の白血球の浸潤が認められる.白血球の組織への浸潤は,ケモカインとその受容体の相互作用により,時空間的に厳密に制御されている.フラクタルカインとその受容体CX3CR1は,RA患者の病変部位における発現が報告されていることから,RA治療の標的候補として考えられる.抗フラクタルカイン抗体は,非臨床RAモデルであるマウスコラーゲン誘発関節炎(CIA)において,白血球浸潤抑制による関節炎改善効果を示し,さらにCX3CR1陽性破骨前駆細胞の浸潤を直接的に阻害することにより骨破壊抑制効果を示すことが明らかとなった.ヒト化抗フラクタルカイン抗体(E6011)は,RA患者を対象とした臨床第Ⅰ相試験において,良好な安全性と忍容性とともに有効性を示唆する結果が得られており,現在,臨床第Ⅱ相試験を実施中である.本稿では,フラクタルカインとCX3CR1のRA病態形成における役割と,フラクタルカイン阻害によるRA治療の可能性について概説する.